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ゴムやフィルム、電子部品の加工に最適な「抜き型」とその加工技術ママさん設計者が教える「設計者のための部品加工技術の世界」(3)(2/3 ページ)

設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第3回は、非金属の周辺部品の加工に欠かせない「抜き型」について取り上げる。

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身近にある抜き型加工のイメージ

 普段あまり意識することはないかもしれませんが、日常生活の中でも抜き型による加工を目にすることがあります。例えば、前回登場したペーパークラフトなどもその代表例です(図4)。

ペーパークラフトでも抜き型による加工が確認できる
図4 雑誌の付録などで見掛けるペーパークラフトでも抜き型による加工が確認できる(小学館『幼稚園 2019年9月号』付録より)[クリックで拡大]

 その他、事務用品でおなじみのラベルシールも抜き型なしには加工できません(図5)。

図5 ラベルシールなども抜き型で加工されている
図5 ラベルシールなども抜き型で加工されている[クリックで拡大]

トムソン型による抜き加工

 トムソン型による抜き加工の方法は、次の2通りになります。

1.専用のトムソンプレス機を使う

 抜き加工に特化した専用の機械なので、もともとストローク長が短く、判を押すように素早い連続抜きが可能です。ワークエリアが広いので、面積の大きな材料をフラットにセットできます。また、プレス時は“下から上”に動きます。

2.汎用プレス機を使う

 一般的なプレス機や卓上プレスでも、型の固定を工夫することでトムソン抜きが可能です。ただし、プレス機の仕様上、面積の大きな材料の加工にはあまり向きません。

図6 トムソンプレス機と汎用プレス機の違い
図6 トムソンプレス機と汎用プレス機の違い[クリックで拡大]

 トムソン型は、紙、接着層を持つフィルム、ゴムシート、スポンジといった、通常のプレス金型ではスムーズな作業がしにくい、薄くて柔らかな材料の外形加工に最適です。これは、プレス金型による加工原理が「上下の刃で挟んで断ち切る」のに対し、トムソン型の加工原理が「片一方から刃を当てることによるせん断」だからです(図7)。

図7 トムソン型による抜き加工は片一方から刃を当ててせん断する
図7 トムソン型による抜き加工は片一方から刃を当ててせん断する[クリックで拡大]

 なお、抜き型もプレス金型と同じように「単発」と「順送」の工程を組むことが可能です。それによって、シンプルな形状のフィルムやマット、パッキンから、複雑形状の電子機器産業向けの部品まで、多岐にわたる部品製作に対応できます。

 主に筆者が抜き型のお世話になっているのは、図8のようなフレキシブル基板の加工です。フレキシブル基板そのものと、前工程のカバーレイ加工の両方で抜き型を用います。カバーレイとは、フレキシブル基板に積層するレジスト代替フィルムのことで、接着層があります。そのため、シールの打ち抜きに用いられる抜き型が最適なのです。なお、基板の外形線部分には銅箔(はく)層がありませんから、刃へのダメージの心配は不要です。PET(ポリエチレンテレフタレート)製の補強板ごとしっかりと抜くことができます。

図8 フレキシブル基板であればトムソン型で十分対応可能
図8 フレキシブル基板であればトムソン型で十分対応可能[クリックで拡大]

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