学生もEV開発に試行錯誤、先輩から後輩への技術伝承も課題に:車・バイク大好きものづくりコンサルタントが見た学生フォーミュラ2019(2/4 ページ)
ラグビーワールドカップで日本がアイルランドに勝利し、沸きに沸いた静岡県袋井市・掛川市内の小笠総合運動公園(通称「エコパ」)。その約1カ月前の8月27〜31日に「第17回学生フォーミュラ日本大会2019」(以下、学生フォーミュラ)が開催されました。2019年もピットレポートを中心に学生さんの熱き活動を伝えていきたいと思います。
#E03 豊橋技術科学大学EV
昨年(2018年)からパワーソースをモーターに変えたものの、伝統のカーボンモノコックフレームは11年間継続。変革と伝統の豊橋技術科学大学チームのリーダー、佐藤弘樹さん(以下HS)にお話を伺いました。
S もうエンデュランスは走り終わったんですよね? どうでしたか?
HS スキッドパッド(6位)、オートクロス(19位)とまずまずだったのですが、今朝になってトラブルが発生し、エンデュランスは出走したものの、ペースを上げることができずに145%ルールに抵触、完走することができませんでした。
S トラブルの原因はつかみましたか?
HS アクセル経路です。もっと煮詰めなければダメですね。
S EV(電気自動車)に移行したのは昨年(2018年)からでしたよね?
HS はい、昨年(2018年)はICV(ガソリンエンジン車)のフレームにEVユニットをコンバートしたので、前後分割モノコック、前半分がカーボン、リアはパイプフレームと言う形でしたが、今年(2019年)は専用設計でフルカーボンモノコックです。
S さすが豊橋技術科学大学!
HS エンジンに比べてパワーユニットが小さいので車体後部が実にコンパクトになりました。外側に出ているのはギア周りだけです。ホイールを13インチから10インチに、そして今年(2019年)からエアロデバイスも加えたので、本当に全てが新設計です。
S やること満載でしたね。でも、これでEV専用マシンとしての基盤ができましたね。
HS はい、でも足回りでまだまだ改善が必要です。あと、EVチームとしての体制の立て直しが必要だと考えています。
S やはりICVとEVとでは大きく違うの?
HS 私は機械工学科なので、エンジンに対する知識はあるのですが、電気が足りない。今回のトラブルもそのあたりにリソースが割けなかったことが原因だと考えています。
S そこが見えたことも今回得られたことだよね。しかし、カーボンの積層技術は群を抜いているよね。
HS はい、ここは手作業の世界なので先輩からの技術、技能の伝承なんです。れからもそれをどう後輩に伝えていくかが大きな課題だと考えています。
S 設計データに残せないものね。
HS カン、コツの世界をどう伝えていくのか、1度文書化もしてみたのですがうまくいきませんでした。うちのチームは職人気質みたいなところがあります。そこが特徴であり、強みだとも思うんです。
S ものづくりではデジタルで伝わるものとそうでないアナログの部分が必ず存在するよね。それをどう融合させるか。うん、いい話だね……。
エンデュランスのリタイアで今大会の成績は厳しいものでしたが、佐藤チームリーダーの話から、今年(2019年)が真のEV元年、これからは進化あるのみと感じました。デジタルとアナログの融合ものづくりは私自身の仕事でのメインテーマですので、佐藤さんとの話には大きくうなずくことが多かったです。来年(2020年)の上位入賞に期待します!
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