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感覚を数値化した車いすレーサーの開発とその先の未来を見据えるRDSの挑戦デザインの力(1/3 ページ)

RDSは、東京都内でプロジェクト発表会を開催。ボーダーレスな未来を描く3つの最先端プロダクトとして、アスリート向け車いすレーサー「WF01TR」、最適なシーティングポジションの検討に役立つシミュレーター「SS01」、通信対戦が可能なVRレーサー「CYBER WHEEL X」を発表した。

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ボーダーレスな未来を描く3つの最先端プロダクト

RDS 代表取締役社長の杉原行里氏
RDS 代表取締役社長の杉原行里氏(クリックで拡大)

 RDSは2019年9月18日、東京都内でプロジェクト発表会を開催。ボーダーレスな未来を描く3つの最先端プロダクトとして、(1)アスリート向け車いすレーサー「WF01TR」、(2)最適なシーティングポジションの検討に役立つシミュレーター「SS01」、(3)通信対戦が可能なVRレーサー「CYBER WHEEL X」を発表した。

 発表会の冒頭、RDS 代表取締役社長の杉原行里氏はパーソナルモビリティ「WF01」に乗って、さっそうとステージに登場。「これは、いつか乗ってみたい車いすを具現化したものだ。RDSは、人間が本質的に持っている『カッコいい』『かわいい』『すてき』といった感情を大切にしている。車いす“だから”こうでなくてはならないといった固定観念に捉われることはせず、近い将来に向けた新しい選択肢を示していきたい」(杉原氏)と述べ、今回発表した3つのプロダクトには、2つの大きなテーマがあると紹介した。

RDSのパーソナルモビリティ「WF01」
RDSのパーソナルモビリティ「WF01」(クリックで拡大)

 1つ目のテーマは、身体データを可視化することにより生み出される「パーソナライズの量産化」だ。これは取得したさまざまなデータを基に、あらゆる人が自分にとっての最適解を導き出し、生活の質や快適性の向上、身体的なパフォーマンスの向上などに役立てるという考え方だ。

 そして、もう1つのテーマが、デザインやテクノロジーによって付与される「新たな価値観の選択肢」だ。例えば、それが車いすなのか、パーソナルモビリティなのかといった既成概念に捉われない、全く新しい価値観を一緒に作り上げていくことを目指すという。

現役復帰のアスリートとともに作った車いすレーサー「WF01TR」

 1つ目のプロダクトであるWF01TRは、2012年に一度は引退しながらも、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの出場を目指して現役復帰を果たした車いす陸上アスリートの伊藤智也氏を開発ドライバーに迎え、開発したアスリート向けの車いすレーサーだ。

WF01TRWF01TR 車いすレーサー「WF01TR」(クリックで拡大)
陸上アスリートの伊藤智也氏
陸上アスリートの伊藤智也氏(クリックで拡大)

 2020年のメダル獲得を目指し、2017年に開発をスタート。3Dスキャナーやモーションキャプチャー、ハイスピードカメラ、フォースプレートなどを用いてマシンの動き、伊藤氏のフォーム、力の分散バランスといった力学的なデータを計測し、アスリートの感覚的な部分を全て数値化していったという。「この作業は伊藤選手と対等にコミュニケーションするために必要なものだった」(杉原氏)。この地道な取り組みをベースに、プロトタイプを製作し、テスト走行を繰り返しながらマシンをブラッシュアップし、完成に至った。

 「感覚の数値化は、本当に自分を丸裸にされたような気分だったが、アスリートの感覚的な部分とテクノロジーの融合は、新たな時代の幕開けといえる。一度丸裸にされた上で、あらためて基礎から作り上げていくというプロセスは理にかなっていると思う。この出来上がった素晴らしいもの(WF01TR)に対して、これから自分をどうアジャストしていくか、楽しみで仕方がない」と伊藤氏は語る。

 また、このプロジェクトを通じて、アスリートのシートポジション(座る位置)がパフォーマンスに大きく影響することを発見したという。「伊藤選手の最適なシートポジションを見つけ出すまでに2年ほどかかった」と杉原氏は振り返る。

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