稼ぎを生み出すデジタルトランスフォーメーションを実現する4つのポイント:サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(2)(2/3 ページ)
サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。第2回は、収益化に直結するデジタルトランスフォーメーションを実現する4つのポイントについて紹介する。
どうすればデジタルトランスフォーメーションを実現させられるのか
ソフトウェアビジネスの世界でデジタルトランスフォーメーションを実現させることはソフトウェアをマネタイズ(収益化)させることだといえる。では、デジタルトランスフォーメーションを実現するにはどのような方法があるのか考えてみたい。これらは従来のソフトウェアビジネスでは達成できなかった要素を多く含んでいることが理解できるだろう。
1.新しいビジネスモデルとテクノロジーで収益ストリームを創造する
かつて、製造業のソフトウェアは無償で機器とセットで販売されるのが一般的だった。しかし現在は、ソフトウェアに価格を付けてソフトウェア単体でも収益を得るのが一般的になっている。収益ストリームとは、継続的で安定した収益源を確立させることだが、製品の販売を終えた時点で顧客との関係性を終えてしまっては、定期的で安定した収益は確保できない。そこで、顧客と対話し、顧客との関係性を強化し、顧客とともに成長することによって、継続的で安定した収益を得られる新しいビジネスモデルに注目が集まっている。その代表的な収益モデルがサブスクリプションであり、今やビジネスモデルの主役の座に躍り出ようとしている。
見込み客から新規顧客を獲得するためにライセンス契約をシームレスに移行させる手段と、新たに発売した新バージョンの製品や追加した機能を収益化させ、既存顧客に対していかにアップセルを実現するかも収益ストリームに影響する。市場の動向や顧客の要求に対して、機能と価格の柔軟なパッケージを用意し、顧客一人一人に応じたパーソナライズされた提案によって、より多くの顧客から支持を得ることができれば、強固な収益源の構築につながっていく。
しかし、サブスクリプション契約やトライアル契約、また顧客個別に設定した機能ごとの利用契約をどのようにしてエンドユーザーに正しく履行させるのか、その方法が必ず課題になる。顧客に契約を正しく履行させる方法がない限り、顧客に新しいビジネスモデルと最大化された製品価値を提供することは不可能だ。
そこで、ライセンシング技術で契約履行をデジタル化させることによって収益ストリームの創造を可能にさせる。トライアルから製品版への移行や、サブスクリプション契約の履行、機能別の複雑なライセンス契約など、柔軟なライセンス管理によって製品やサービスの正確な契約履行を実現させる。契約履行をデジタル化できれば、複雑なライセンス契約も海を超えて提供することが可能になり、より多くの顧客を獲得できるようになる。ベンダー企業自身の収益を確保するためにライセンス契約履行のデジタル化は避けて通れない要素だ。
また、ソフトウェアのセキュリティレベルの低さから、収益ストリームを失っているケースも多く存在している。製品に対するリバースエンジニアリングやライセンス違反の複製利用によって、本来得られるはずの利益を失っている。グローバルビジネスに取り組む企業ほど、ソフトウェアのセキュリティには目を向ける必要がある。ライセンス契約に沿って製品を制御する仕組みと、ファイルやソフトウェアの暗号化、リバースエンジニアリングへの対応などによって、収益ストリームを確保、維持、保護し、競争力を保つことは、企業が持続可能なビジネスを将来に渡って展開するために変わることのない重要なテーマである。
2.カスタマーエクスペリエンスを追求して顧客満足度を向上させる
サブスクリプションモデルの浸透によって、顧客との契約継続性や離反率の低下を防ぐ手段で収益を確保し、サポートコストの抑制も実現するために、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)が重要視されている。
例えば、必要な機能と料金体系の組み合わせを顧客自身が選択して、パーソナライズされた柔軟な契約プランを実現できるサービスや、顧客自身が自分の情報を参照したり、いつでも好きなタイミングでライセンスをアクティベーションできたりするポータルサイトの機能が、カスタマーエクスペリエンスを強化する。それによって、顧客にカスタマーセルフサービスが可能な環境で快適な利用環境を提供できれば、顧客満足度を向上させられる。
ソフトウェアのアクティベーションの自動化やライセンスに関する情報の可視性、情報入手の容易さ、ソフトウェアのダウンロードや、アップグレード、ライセンス更新をスムーズに行えるサービスの提供は、カスタマーエクスペリエンスを強化させる。今や、カスタマーエクスペリエンスを強化して顧客満足度を向上させるプロセスは、コストの削減と収益化を実現させるために欠かせなくなっている。
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