モビリティ革命の原動力、日本の交通における3つの課題:交通政策白書を読み解く(前編)(3/5 ページ)
国土交通省は2019年6月に「平成30年度交通の動向」および「令和元年度交通施策」(以下、交通政策白書2019)を公開した。本稿では、交通政策白書2019の第1部に示された交通の動向を概観したうえで、第2部「モビリティ革命〜移動が変わる、変革元年〜」から交通における現在の課題について取り上げたい。
地方部の交通を巡る状況と課題
地方部においては、人口動態やモータリゼーションの進展に伴い、日常生活における交通手段として自家用車がよく使われるようになったことを受け、公共交通の利用者数が減少している。モード別に見ると、地方部の乗合バスの利用者数は緩やかに減少を続けており(図8)、地域鉄道は利用者数が伸び悩んでいる(図9)。乗合バスの輸送人員は2000年から2016年で約24%減少した。またこうした状況を背景に、バス、鉄道ともに路線廃止の動きが見られる(図10)。
地方部においては都市部よりも急速に人口減少や高齢者人口の増加が進み高齢化率も上昇しているが、高齢者の外出率を見てみると、前期高齢者(65〜74歳)の休日の外出率が全年齢を上回るなど、活動的な高齢者が多いことがうかがえる(図11)。
さらに、高齢者の免許保有率は2015年には50%を超えるなど年々増加しており、非高齢者が免許を所持したまま高齢者世代へ突入することを考慮すると、今後も高齢者の免許保有率は上昇を続けるものと考えられる(図12)。しかしその一方で75歳以上の高齢運転者は、75歳未満の運転者と比較して死亡事故を起こしやすい傾向にあり、こうした中、高齢者の運転免許証の自主返納件数は年々増加傾向にある(図13)。
このように、高齢者の外出は多くなっている一方、地方部では公共交通サービスの縮小や撤退が進んでいる。また、高齢者の運転免許証の自主返納件数が近年増加傾向にあり、公共交通の縮小による生活の不安も示されている(図14)。交通政策白書2019では、こうした中で高齢者や、自ら運転することができない学生や子どもの移動手段の選択肢を拡げ、外出機会の減少を防ぐ必要が生じていると述べている。
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