モビリティ革命の原動力、日本の交通における3つの課題:交通政策白書を読み解く(前編)(1/5 ページ)
国土交通省は2019年6月に「平成30年度交通の動向」および「令和元年度交通施策」(以下、交通政策白書2019)を公開した。本稿では、交通政策白書2019の第1部に示された交通の動向を概観したうえで、第2部「モビリティ革命〜移動が変わる、変革元年〜」から交通における現在の課題について取り上げたい。
国土交通省は2019年6月に「平成30年度交通の動向」および「令和元年度交通施策」(以下、交通政策白書2019)を公開した。今回は「モビリティ革命〜移動が変わる、変革元年〜」をテーマに、交通の動向や交通に関する施策を紹介している。
交通政策白書2019の第1部では交通を取り巻く社会・経済の動向、各分野の交通の輸送量、ネットワーク、交通事業の動向について、第2部では、地方部の輸送人員の減少や都市部の交通混雑への対応といった交通の課題を分析するとともに、技術革新による社会やサービスの変化について整理し、交通分野におけるさまざまな先進事例の動向を紹介している。第3部では2015年2月13日に閣議決定した「交通政策基本計画」に盛り込まれた施策の進捗(しんちょく)状況や今後の取組方針を整理している。
本稿では、交通政策白書2019の第1部に示された交通の動向を概観したうえで、第2部「モビリティ革命〜移動が変わる、変革元年〜」から交通における現在の課題について取り上げたい。
日本における交通の動向
最初に、交通政策白書2019の第1部に示された交通の動向を概観する。
国内旅客輸送については、鉄道や乗合バスは緩やかな増加傾向にあり、鉄道は2005年から2017年にかけて約14%増加し、乗合バスは同期間に約2%増加している(図1)。航空はリーマンショック後、国内線LCCの参入などにより回復し、ここ数年は増加傾向にある。一方で、旅客船はここ数年横ばいで推移しており、タクシーは2005年から2017年において約33%減など、長期にわたり減少が続いている。
国際航空旅客輸送は、ここ数年、訪日外国人旅行者の顕著な増加、特にLCC利用者の急増に伴い増加している(図2)。
国内貨物輸送は、リーマンショックの影響で急減した後はおおむね安定的に推移している(図3)。他方、国際貨物輸送は、リーマンショックによる落ち込みから回復した後、ここ数年においては、外航海運(コンテナ)、航空のいずれも増加傾向にある(図4)。外航海運は2005年から2017年にかけて約17%増加し、国際航空貨物は同期間に約22%増加している。
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