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高額投資なしで大規模解析の計算時間が9分の1に! ケーヒンのクラウドCAE活用CAE事例(1/3 ページ)

「ANSYSものづくりフォーラム in 東京2019」におけるケーヒンの講演「クラウドを用いたCAE開発工数/環境改善の提案」の内容を紹介する。

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 本稿では、2019年7月26日に都内で開催された「ANSYSものづくりフォーラム in 東京2019」(主催:サイバネットシステム)におけるケーヒンの講演、「クラウドを用いたCAE開発工数/環境改善の提案」の内容を紹介する。同講演では、ケーヒン 栃木開発センター 開発本部 電動技術統括部 PCU開発部 第一課の有本志峰氏が登壇し、自動車業界における設計開発の変化と、クラウドCAE活用の利点について述べた。

 ケーヒンは、キャブレターやフューエルインジェクションの開発および製造を主力とする、ホンダ系ティア1サプライヤーで、1956年に神奈川県川崎市で創業し、2016年で60周年を迎えている。

 現在ケーヒンは、2030年度までに連結売上高を2016年度比の2倍に当たる7000億円まで拡大する計画を掲げ、「新環境車ソリューションのグローバルブランドへ」というビジョンの下、電気自動車(EV)を含む環境車(エコカー)向け製品の取り組みを加速している。

ケーヒンにおける2030年のビジョン(出典:ケーヒン)
ケーヒンにおける2030年のビジョン(出典:ケーヒン)

今、自動車業界の設計現場で起こっていること

 自動車業界では今、グローバルな環境問題に対応するための電動化と併せ、交通渋滞や交通事故などの問題を低減させるべく自動運転への取り組みも進行している。そのため、自動車に関連する周辺システムは増大し、複雑化の一途たどっており、自動車業界における製品開発スタイルの変革が強く求められている。こうした変化を受け、ケーヒンの設計開発も従来のメカ中心の設計からエレメカ協調設計体制に変わっていったという。

自動車業界の状況(出典:ケーヒン)自動車業界の状況(出典:ケーヒン) 自動車業界の状況(出典:ケーヒン)

 従来の自動車業界では、試作によるトライ&エラーを繰り返しながら仕様を決定していく“すり合わせ設計”が進められてきた。「当たり前だが、これでは工数が増えてしまう。気合いと根性で何とかなっていた状況だ」と有本氏。そこで、開発初期段階のコンポーネント設計の品質を高めることで試作回数を減らし、かつ仕様決定の時間を短縮できる「フロントローディング設計」に注目が集まった。また、1D CAEによる全体設計と、3D CAEによる部品設計を行う「試作レス」への取り組みも求められると有本氏は説明する。

 ケーヒンでは、MBD(Model Based Design:モデルベース開発)やMBSE(Model Based Systems Engineering:モデルベースシステムズエンジニアリング)にも取り組んでいる。MBDは、シミュレーションモデルを利用し、事前評価を取り入れた開発手法である。以前は組み込みソフトウェア開発の手法として語られることが多かった。また、かつてのシミュレーションモデルは、製品の要求および機能を記述したツリーやブロック図などを用いて、制御システムを抽象概念として表現。しかし、近年では製品が複雑化するとともに制御対象が広がってきたこともあって、CAEのシミュレーションモデルまで含められるようになった。

 環境配慮や自動運転を考慮した車両システムにおいては、周辺機器はもちろん、他の通行車両、道路などの交通インフラ、周辺環境のシステムとの連携を考慮しなければならない。ますます大規模化するシステム開発に対応するため、自動車業界では従来のMBDをさらに進化させたMBSEに取り組む動きが見られる。

 ケーヒンはこれら手法を用いて、ヌケ/モレのない製品開発を目指しているという。ここで作られるモデルは「動く仕様書」とも呼ばれ、CAEによるシミュレーションのデータも用いて製品の機能を定義する。「われわれティア1と、ティア2、OEMなどの間で、CAEモデルである『動く仕様書』をやりとりしながら製品開発を進めている。そのような手法が、クルマを巡るさまざまな周辺環境や条件を考慮した全体最適設計につながると考えている」(有本氏)。

 また、そのような設計の変化が、ビジネスも変えると有本氏は説明する。「ティア1と、ティア2、OEMとともにビジネスをする中で、CAEモデルを用いていけば、顧客のニーズに合わせたCAEモデルの提供もでき、汎用(はんよう)性のある仕様設計をモデルに盛り込むこともできる。例えば、OEMから求められるニーズを全て受けてしまうと、仕様過多な設計になってしまうことも考えられる。PCU(パワーコントロールユニット)であれば、モーターやバッテリーなどを組み合わせたシステムで提案するということも可能になる」(有本氏)。

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