「大事なのはIoTではない」自動化と熟練の技による“夢工場”目指すオークマ:MONOist IoT Forum 名古屋2019(前編)(1/2 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの産業向け4メディアは2019年7月10日、名古屋市内でセミナー「MONOist IoT Forum 名古屋」を開催した。本稿の前編では、オークマ 専務取締役 領木正人氏による基調講演「IoTが拓く“スマートファクトリー”の展望」の内容をお伝えする。
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの産業向け4メディアは2019年7月10日、名古屋市内でセミナー「MONOist IoT Forum 名古屋」を開催した。本稿の前編では、オークマ 専務取締役 領木正人氏による基調講演「IoTが拓く“スマートファクトリー”の展望」の内容をお伝えする。
「日本で作って世界で勝つ」ために必要だったスマートファクトリー
NC旋盤、マシニングセンタ、複合加工機など工作機械大手のオークマでは、自社工場のスマート化を積極的に進めている。インダストリー4.0や第4次産業革命など、世界中がスマート工場の実現に取り組む状況だが、いち早く取り組みを開始し2013年にはスマート工場として「Dream Site1(DS1)」を完成させた他、2017年3月には「Dream Site2(DS2)部品工場」を完成させるなど、導入を拡大している。
こうした取り組みの背景として、オークマ 専務取締役 領木正人氏は「工作機械はマザーマシンといわれ、モノづくりの良しあしを決める重要な設備となる。日本は1982〜2008年まではこの工作機械の生産額で世界一の地位を確保していた。しかしその後は中国に抜かれた。ただ、中国の機械は中国外には輸出できないので、グローバル市場でのシェア争いという面では、いまだに日本企業とドイツ企業がしのぎを削っているという状況だ」と工作機械の市場動向について説明する。
さらに、こうした状況の一方で「オークマの工作機械生産では機種数は約300種、部品種類は約16万種、月生産台数約600台という状況で、超多品種少量生産が求められている」と領木氏は工作機械生産の難しさについて語る。
これらの条件の中で「国際的な競争力を維持しつつ、品質や強みを守り続けるには、スマートファクトリー化によって効率化を進めていくことが必要だと考えた。この考えから、『日本で作って世界で勝つ』ということをコンセプトにスマート工場『DS1』を作った」と領木氏は、DS1設立の経緯について語っている。
DS1は、中型および大型の複合加工機やCNC旋盤を生産する、部品から完成品組み立てなどを担う一貫生産工場で、2013年に本格稼働を開始した。建屋面積は2万3600m2で、24時間・週7日間稼働を実現している(※)。
(※)関連記事:「日本で作って世界で勝つ」――オークマが“夢工場”で描く未来とは
領木氏は「前提として2000年ごろに策定したモノづくりの考え方がある。サプライチェーンを構成する水平方向のシステム連携を進めていくのと、設計情報などのエンジニアリングチェーンを構成する垂直方向のシステム連携である。これらの交点が工場でありナレッジマネジメントや改善活動などが求められる領域だ」とする。この考え方を前提に、DS1では、垂直方向の連携を容易にしリードタイム削減につながる「ダイレクトマシニング」、垂直方向の連携を実現する「新・生産管理システム」、これらの見える化を実現し現場の改善を促す「見える化システム」などの新たな仕組みを取り入れた。
領木氏は「工夫したのは、徹底した情報の見える化により現場での課題発見や問題発見の仕組みとしたことだ。最終的には何らかの改善につなげなければ効果は生まれない。そのために気付きや改善点などを共有するコミュニケーションボードを作り、これで改善が進み始めた。情報共有を前提とし、同じ情報を基に正しいコミュニケーションを増やす仕組みとしたのがポイントだ」と語っている。これらの取り組みによりDS1では従来の工場に比べて、生産性は2倍に、リードタイムは半分に削減できたという。
DS1での成果を基盤とし、さらに進化させたのがDS2となる。
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