車載イーサネットのフィジカルレイヤーはどのようになっているのか:はじめての車載イーサネット(2)(2/4 ページ)
インターネット経由で誰とでもつながる時代。個人が持つ端末はワイヤレス接続が大半を占めていますが、オフィスなどではいまだに有線によるローカルエリアネットワーク(LAN)が使われています。そのLANの基盤技術の1つとして広く使われているイーサネット(およびTCP/IP)が、次世代の車載ネットワーク技術として注目を浴びています。本稿では注目される背景、役割や規格動向から、関連するプロトコルの概要まで、複数回にわたり幅広く解説していきます。
PHYという存在
それぞれのフィジカルレイヤーのお話をする際、避けて通れないのがPHY(イーサネット PHY)(※1)と呼ばれる部品です。これは、ECUの中にあるマイクロコントローラーと通信媒体(物理媒体、銅線、光ファイバー等)との間を取り持つもので、マイクロコントローラーから出てきたパラレル信号を特定の通信媒体上にシリアル信号として送り出す、またはその逆を行う存在です。
(※1)PHY:フィジカルレイヤー(PHYsical layer)の先頭3文字を取ったものです。
CANの場合だと、CANコントローラーが扱うTXD/RXDをCANH/CANLに変換(ただし、どちらもシリアル信号)するCANトランシーバーがそれに近い存在です。ただ、PHYの場合、イーサネットの高速通信を支えるために、パラレル信号をそのままシリアル信号にしているわけではなく、符号化・スクランブリング(※2)を行っています。この結果、イーサネットの場合、先に述べた通り、通信波形を見ただけでは通信内容が分からなくなっています。
(※2)元の信号をランダムに入れ替え、同じようなパターンが連続しないようにすること。外部に対するノイズを低減することを狙っています。
それはさておき、PHYはマイクロコントローラーと通信媒体の間にありますので、それぞれとのインタフェースを持っており、前者をMII(Media Independent Interface)、後者をMDI(Medium Dependent Interface)と呼びます。MIIは通信媒体に依存しないインタフェースで、送受信それぞれで4ビットのパラレル信号を25MHzでマイクロコントローラーとやりとりをしており、100Mbpsでの通信が可能です。バリアントとして1Gbpsの通信が可能なGMII(※3)もあり、これは8ビットの信号を125MHzでやりとりしています。
(※3)GMII:GはGigaの略。
一方、MDIは通信媒体ごとに異なったインタフェースであり、ペア線(1対、複数対)を用いるのか、光ファイバーを用いるのか等によって違ってきます。もちろんMDIが変わればMIIとの変換方式も変わりますので、PHYの内部構造も変わってきます。(当たり前ですが)通信媒体ごとに別々の規格やPHYがあるということです。では、次にそれらを紹介していきます。
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