バーチャルキー対応車両は2022年に5000万台、米国と欧州がけん引:車載情報機器
矢野経済研究所は2019年7月17日、自動車向けバーチャルキーの市場調査の結果を発表した。バーチャルキーは、スマートフォンのアプリと通信回線や近距離無線通信を使用して、車両の解錠や施錠、エンジンスタートなどの機能を提供する新車向けコネクテッドサービスの1つ。
矢野経済研究所は2019年7月17日、自動車向けバーチャルキーの市場調査の結果を発表した。バーチャルキーは、スマートフォンのアプリと通信回線や近距離無線通信を使用して、車両の解錠や施錠、エンジンスタートなどの機能を提供する新車向けコネクテッドサービスの1つ。
2018年のグローバルでのバーチャルキー搭載車両の台数は、前年から倍増して2069万台となった。けん引役となったのは米国市場だ。米国で緊急通報システムが義務化されたことに伴い、バーチャルキーに対応したインフォテインメントシステムが新車の多くに搭載されたことが背景にある。
2019年の時点では、米国で市販されている乗用車のほとんどがバーチャルキーに対応している状況だとしている。ドイツのプレミアムブランドも、グローバルで新車にインフォテインメントシステムを標準搭載する動きが活発化しており、米国市場に続いて欧州でも普及が進みつつあるという。バーチャルキー搭載車両の台数は、2020年に3370万台、2021年に4220万台、2022年に5030万台に拡大する見通しだ。
欧州市場でのバーチャルキー普及は、Volkswagen(VW)の取り組みの影響も受ける。VWは2019年秋に発表する主力モデルの新型車から、次世代インフォテインメントシステムの搭載とバーチャルキーへの対応を進める。また、中国でもインフォテインメントシステムを通じたコネクテッドサービスの導入が進みそうだ。中国では地場のIT企業を中心とした独自のエコシステムが構築される可能性が高い。また、カーシェアリング向けに、後付け用の車載スマートロックの導入も有望だとしている。
一方、日本市場は、カーナビゲーションシステムの普及状況や、移動距離の少なさ、販売店のネットワークやロードサービスが充実している点などから、コネクテッドサービスへの需要が低いという。ただ、車両盗難やあおり運転、運転ミスによる重大事故などの社会問題を解決する手段の1つとしてコネクテッド化が進むとしている。その一環で、バーチャルキーの普及も進むという。
IT大手と連携したコネクテッドサービスの取り組みも始まっている。Googleの車載インフォテインメントサービス「Android Auto」ではAIアシスタント「Google Assistant」が利用可能で、AIスマートスピーカー「Google Home」とも連携できる。これにより、運転中に自宅のエアコンを操作したり、自宅のGoogle Homeからエンジンを始動することなどが可能となる。AppleやAmazonも同様のサービスを提供しているが、AmazonはFord MotorやVolvo Carsと組み、クルマのトランクを宅配ロッカーとして利用できる「Amazon Key」の運用を開始した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 完全冗長EPS、次世代カメラやミリ波が2019年から量産、ボッシュの自動運転戦略
ボッシュは2019年6月25日、東京都内で年次記者会見を開き、2018年の業績と2019年以降に向けた取り組みについて発表した。 - アルプスアルパインがブロックチェーン活用を強化、フリービットと業務提携
アルプスアルパインとフリービットは2019年7月23日、東京都内で会見を開き、ブロックチェーン技術の活用について包括的業務提携を結んだと発表した。安全なデジタルキーの共同開発、車両情報や走行データのセキュアな管理を実現するITインフラの構築などで協力する。 - ブロックチェーンでスマホをクルマの鍵に、アルプスとアルパインの連携で実現
アルプスアルパインは「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)において、ブロックチェーンを用いたクルマ向けのデジタルキーを展示した。物理的なキーを使わないことで、クルマの貸し借りやカーシェアリングの利便性を向上させる。ブロックチェーンを用いることで、デジタルキーの管理や維持にかかるコストを低減する。 - クルマのスマートキーは今後どのように賢くなるのか
コンチネンタルは、Bluetooth Low Energyとスマートフォンを活用した次世代のクルマの鍵を開発している。ドライバーが乗車しようとして歩いてくるのを識別して解錠したり、ドライバーが誰であるかを認識して乗り込む前にシートの位置やエアコンの設定を自動で行ったりできるようにする。また、スマートフォンがそのままクルマの鍵になる技術も2016年末に向けて開発中だ。 - クルマの鍵を持たずに、必要な時にサービスとしてクルマを使うには
Continental(コンチネンタル)は、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」において、生体認証やスマートフォンでクルマを解錠、始動する技術を紹介した。 - 24時間365日の安心安全を提供、新型「クラウン」「カローラスポーツ」から展開
トヨタ自動車は2018年6月26日、フルモデルチェンジした「クラウン」と、新型車「カローラスポーツ」を発表した。2モデルとも同日付で発売する。新型クラウン、新型カローラスポーツともに車載通信機(DCM)を全車標準搭載とし、コネクテッドカーの本格展開を始める。ユーザーは3年間無料でコネクテッドカーのサービスを利用できる。クルマがつながることによってユーザーとの接点を増やし、さまざまなサービスで利便性や安心安全を提供する。 - 2025年に会員数8000万人を見込む、VWのサービスプラットフォーム
Volkswagen(VW)は「フランクフルトモーターショー2017」(プレスデー:9月12〜13日、一般公開日:9月16〜24日)において、モビリティサービスのデジタルプラットフォーム「Volkswagen We(以下、We)」を発表した。