デジカメの魂は死なず、皮膚科医向けカメラでよみがえるカシオのDNA:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(14)(1/4 ページ)
2018年5月、コンシューマー向けコンパクトデジカメラ市場からの撤退したカシオ計算機。「B2B用途やカメラ技術を応用した新ジャンル製品など、カメラを別の形で生かした新しい製品に事業を切り替えていく」としていたが、その方針が形となった製品が発表された。皮膚科医向けの業務用カメラ「DZ-D100」だ。
2018年5月9日、カシオ計算機は同日開かれた決算説明会で、「コンシューマー向けコンパクトデジタルカメラ市場からの撤退」を発表した。このニュースは、カメラマンよりもむしろ、デジタルガジェット市場に関係する多くの人々に衝撃をもたらした。今につながるデジタルカメラの市場を作ったのは、1995年に発売された同社の「QV-10」であることは、周知の事実だったからである。
市場を作ってきた本家の撤退は、スマートフォンに押されるデジタルカメラ事業の厳しい現実をわれわれの目の前に突き付けた格好となった。当時の説明会では、「B2B用途やカメラ技術を応用した新ジャンル製品など、カメラを別の形で生かした新しい製品に事業を切り替えていく」とされた。
ただ、カシオが言うB2B用途とは何なのか、当時は誰も想像できなかった。B2Bとは当然、業務レンジという話になる。これまでカシオのデジタルカメラには、防塵(じん)、防水のタフネス仕様のものやレンズとモニターの分離型といったものは存在したが、業務で使われているという話は聞いたことがなかったからである。
しかし2019年4月25日のプレスリリースで、全て納得がいった※)。皮膚科医向けの業務用カメラ「DZ-D100」が発表されたのだ。これは紛れもなく「カシオのデジカメ」であり、B2B向けだ。そこで早速このカメラの開発経緯を伺うべく、東京・初台にあるカシオ計算機の本社へと足を運んだ。
※)関連記事:患部の接写と通常撮影が1台でできる皮膚科医向けカメラ
お話を伺ったのは、同社事業開発センター DC企画推進部 チーフエンジニアの青木信裕氏、ハードウェア開発部 第五開発室 室長の小甲大介氏、同開発室 アドバイザリー・エンジニアの大塚浩一氏である。
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