中小製造業に求められる自己変革――デジタル化とグローバル化による生産性向上:2019年版中小企業白書を読み解く(2)(5/7 ページ)
中小企業の現状を示す「2019年版中小企業白書」が公開された。本連載では、中小製造業に求められる労働生産性向上をテーマとし、中小製造業の人手不足や世代交代などの現状、デジタル化やグローバル化などの外的状況などを踏まえて、同白書の内容を4回に分けて紹介する。第2回は、「デジタル化」と「グローバル化」を切り口とし、中小製造業の自己変革の必要性について取り上げる。
中小企業におけるIoTとAIの活用実態
それでは次に、中小企業におけるIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などデジタル技術の活用実態はどうだろうか。図14は従業員規模別に見た、IoTとAIの導入状況である。これを見ると、中小企業は大企業と比較してIoTやAIなど最新のデジタル技術の導入に総じて消極的な傾向が見える。「IoT・AIどちらも導入意向はない」企業の割合が中小企業の半数を超えているという状況だ。
IoTの導入意向がない理由については、大企業・中小企業ともに「導入後のビジネスモデルが不明確」が最大となっている(図15)。IoTへの関心は最近非常に高まっているが、企業にとってはあくまで経営上の課題を解決するためのツールである。自社の経営課題が明らかになっていない状況では、IoTを導入する必然性が乏しいため、まずは自社の経営課題を明らかにした上で、IoTの活用可能性を検討することが重要になると考えられる。
モノとインターネットがつながることで、さまざまなデータを収集・蓄積できるようになったが、より重要なことはそのデータをいかに活用するかということである。図16は、IoTを導入している企業に対し、収集・蓄積したデータの活用状況を見たものである。
収集・蓄積したデータの活用方法は、大きく「既存業務の改善」と「商品やサービスの開発や展開」の2方向に分けられる。これを見ると、「既存の業務改善」への活用は大企業・中小企業ともに一定程度進んでいるが、「商品やサービスの開発や展開」に関しては、活用が進んでいないことが分かる。中小企業にとって、収集・蓄積したデータを基に新たな事業展開を検討していくことは、新たな成長機会につながる可能性がある。中小企業においては、IoTやAIを自社の経営に活用できるか否かの検討を行い、経営課題の解消に役立てていくことが期待される。
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