世界で最も3Dプリンタに期待しない日本、“小さな鋳造工場”をどう生かすか:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
国内製造業の設計、開発、製造・生産技術担当役員、部門長らが参加した「Manufacturing Japan Summit(主催:マーカスエバンズ)」が2019年2月20〜21日、東京都内で開催された。開会基調講演では、GEアディティブ日本統括責任者のトーマス・パン氏が登壇し、「パラダイムシフト:アディティブ製造がもたらすモノづくり変革」をテーマに、積層造形技術の持つ可能性や、GEアディティブの取り組みについて紹介した。
国内製造業の設計、開発、製造・生産技術担当役員、部門長らが参加した「Manufacturing Japan Summit(主催:マーカスエバンズ)」が2019年2月20〜21日、東京都内で開催された。開会基調講演では、GEアディティブ 日本統括責任者のトーマス・パン氏が登壇し、「パラダイムシフト:アディティブ製造がもたらすモノづくり変革」をテーマに、積層造形技術(3Dプリンティング技術)の持つ可能性や、GEアディティブの取り組みについて紹介した。
海外では3Dプリンタに63%が期待、日本では36%
GEでは数年に一度イノベーションバロメーターを実施し、世界20カ国のビジネスエグゼクティブ約2000人を対象に調査を行っている(※)。
(※)関連記事:“革新”を「天才が生む」と考える日本、「組織で生み出す」と考える世界
この調査の中で、今後期待される新たな革新的技術として「3Dプリンティングのその効果への期待」について質問したところ、海外では63%が「3Dプリンティング技術(積層造形技術)はビジネスの影響を与えると思う」という回答が占めた。一方、日本(対象者100人)では同意見は36%にすぎず、世界で最も低い数字だったという。
「日本は、世界でも珍しいくらい、3Dプリンティング技術にビジネス効果を期待していない国だという結果が出ている」とパン氏は特殊性を訴える。
ただ、実際には3Dプリンティング技術に関連する市場規模はグローバルでは急速に拡大している。市場規模は2017年度に約73億ドル(約8000億円)となり、前年比は21%増となっている。今後も年平均2〜3割の成長が見込まれているという。
その中で特に大きく期待されているのが金属3Dプリンタである。3Dプリンタには主に樹脂を素材として使用するものと、金属を使用するものがある。2014年には2対1で樹脂の割合が高かったが、2027年頃には1対1になることが予想されており、今後は大幅に市場が拡大すると期待されている。
投資金額を見ても今後大幅に増える見込みだ。2017年まで4年間で130億ドル(約1.5兆円)だったものが、今後、10年間では2800億ドル(約30兆円)の投資が予想されるなど、投資額は急拡大する。2027年度には、金属3Dプリンタへの投資は540億ドル(約5.9兆円)に達するとみられている。
GEが取り組む金属3Dプリンタ技術
期待を集める金属3Dプリンタだが、現在使用されている技術方式は主に3つの種類がある。GEではこのうち、開発段階のバインダージェット式を除き、レーザー式、電子ビーム式の2種類を産業向けとして展開。自社内での部品製造に活用する他、造形サービスなどを展開する。
金属3Dプリンタで使用する材料には、特殊合金や難削材、超高耐熱素材などの金属粉末素材(チタン合金、コバルトクロム合金、ニッケル系合金、アルミニウム合金、マルエージング鋼、ステンレス鋼、真ちゅう、貴金属など)を用いている。金属3Dプリンタは使用できる材料が限定されていることが課題の1つとされてきたが「粉末にできる金属であればほとんどの金属が使える可能性がある」とパン氏は訴える。
積層造形技術を活用する利点についてパン氏は「より迅速な製品開発や画期的なパフォーマンス向上などが実現できる。また、形状自由度が非常に高く、製品寿命や耐久性の向上、サプライチェーン効率化の効果などが期待される」と述べている。さらに「現在、金属3Dプリンタを試作や開発の現場で使用するのは当たり前となっている。しかし、本来金属3Dプリンタは量産に使うことで大きなメリットが得られる」とパン氏はその価値を強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.