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流れの計算に大きな影響を与える「レイノルズ数」を考える初心者のための流体解析入門(4)(1/2 ページ)

流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は流体解析における特有な用語の1つである「レイノルズ数」について取り上げる。

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 前回までは「流体解析」と「構造解析」の間で何らかの比較を行いながら解説を進めてきました。今回は、流体解析における特有な用語の1つである「レイノルズ数」について取り上げたいと思います。

レイノルズ数とは?

 構造解析か流体解析かを問わず、シミュレーションを行う上で“実験”は必須の存在といえます。言い換えると、実験などの裏付けのないシミュレーションは信頼性の上で「問題がある」といえるでしょう。とはいえ、実験が困難な場合も少なくありません。特に実物が大きなものである場合、スケールダウンしたもので実験するということはよくあることだと思います。

 これは、流体解析でも当てはまります。例えば、飛行機の空力特性などを検証する場合、最終的に実機で検証するにせよ、開発段階においては風洞などの実験によって検証が行われます。この際、実機を数分の1にスケールダウンしたモデル(模型)が用いられますが、このように実機と模型でスケールが異なる場合は、レイノルズ数を一致させる必要があります。

 では、レイノルズ数とは何か? というお話ですが、実は物理学者のオズボーン・レイノルズ(Osborne Reynolds)氏の名前にちなんだもので、前述のような異なるスケールの実験などを行う際に、力学的な相似性を評価するのであれば、その数値を必ず考慮しなければなりません。

 また、詳しくは後述しますが、この数値は「層流」と「乱流」の判断などにも用いることができるため、流体解析においてその解析が乱流なのか、層流なのかを設定する際の判断基準となります。

 ここで、レイノルズ数の定義を示します(式1)。

式1 レイノルズ数の定義
式1 レイノルズ数の定義

Re:レイノルズ数、V:代表速度、L:代表長さ、ρ:密度、μ:粘性係数、ν:動粘性係数

 式1からも分かる通り、レイノルズ数とは“慣性力と粘性力の比である”といえます。なお、レイノルズ数は無次元の数値です。

異なるスケールの実験を行う場合の約束事

 一般的に異なるスケールの実験を行う場合、以下に示す2つの事項を一致させる必要があります。

  1. 実験を行う対象のジオメトリが相似形であること
  2. 流体に作用する力の比率が同じであること

 つまり、実機の飛行機と風洞内の模型飛行機の形が相似形であることはもちろん、式1で示したレイノルズ数、すなわち“慣性項と粘性項の比率が一致することが必要”ということになります。

 ちなみに式1を見てみると、レイノルズ数は分子にある代表長さと代表速度に比例することが分かります。スケールダウンしたモデルの場合、代表長さが10分の1であれば、代表速度を10倍にすればレイノルズ数は同じになります。

 また、世の中の風洞には、高レイノルズ数風洞などもあり、例えば高圧低音の窒素を使用して粘性係数を下げるなどし、代表長さと代表速度以外のパラメーターでレイノルズ数を合わせるものもあります。

慣性力と粘性力は“流れ全般の挙動”に大きな影響を与える

 ところで、レイノルズ数を定義する慣性力と粘性力は、「外部流れ」「内部流れ」を問わず、流れ全般の挙動に大きな影響を与えます。その1つが層流と乱流に関するものです。

 層流と乱流については、「レイノルズの実験」がよく知られています。レイノルズの実験とは、細いパイプの中に水を流し、さらにその中心部分にインクを流すという実験です。水流が遅いと、インクは乱れることなく一本の筋となって流れ続けます。ところが、水流の速度が上がると、途中からインクの流れは乱れてしまいます。これがレイノルズの実験ですが、この結果から分かるのは、流体の流れが乱流になるのか、層流になるのかということに対し、流体の速度、つまり「流速」が大きな支配力を持つということです。

レイノルズ数と層流、乱流の関係

 ということで、ここでレイノルズ数と層流、乱流の関係について考えてみたいと思います。

 先ほど、レイノルズ数を求める式は分子が慣性力、分母が粘性力と説明しました。ちなみに、慣性は不安定性に寄与するので「不安定化力」、逆に粘性は安定に寄与するので「安定化力」といえます。つまり、粘性が高いとき、あるいは同じ粘性でも速度が遅ければレイノルズ数は小さくなります。ある一定以下のレイノルズ数の場合には、流れが乱れない層流となります。その逆、すなわち粘性が低い場合や、流体の流れが速い場合にはレイノルズ数が大きくなるので、流れは乱流になります。このように、レイノルズ数を計算すれば、その流れが層流なのか、乱流なのかという判断も可能です。

 では、層流になるのか、それとも乱流になるのかの、レイノルズ数の“しきい値”はどのあたりにあるのでしょうか。実は、内部流れを相手にしているのか、外部流れを相手にしているのかによって異なります。

 一般的に内部流れの場合、レイノルズ数のオーダーが数千までであれば、流れは層流であると考えられます。一方、外部流れの場合、このオーダーが数十万とされています。ですから、例えばレイノルズ数を計算したときに1万だった場合、それが内部流れを計算しているのであれば乱流といえますが、外部流れの場合は層流であると考えられます。

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