Dockerにも対応するIoTゲートウェイが引き出すエッジコンピューティングの力:製造業IoT
ぷらっとホームのIoTゲートウェイ「OpenBlocks IoT Family」の最新ソフトウェア「FW3.3」は、直感的に操作可能なWeb UI上で、各種センサーやデバイス、クラウドサービスとの接続、Dockerコンテナのデプロイなどを一元的に行える。マイクロソフトのクラウド「Azure」との連携により、その力を最大限に発揮することが可能だ。
IoTの枠組みで高まるエッジデバイスの果たす役割
IoT(モノのインターネット)への取り組みが実証実験から実用化に移行するにつれ、システムの運用形態にも大きな変化が表れている。各種センサーから収集したデータをただクラウドで集めて分析するではなく、エッジデバイスでフィルタリングなどの前処理を行ってからクラウドに送る、あるいはクラウド側での分析や学習などを経て作成された推論モデルをエッジデバイスに転送して実行させる「エッジコンピューティング」が重要視されるようになった。
大手クラウドベンダーであるマイクロソフトもこのニーズの変化を先取りし、エッジデバイスにより多くの機能を担えるようにした「Azure IoT Edge」を展開するなどしている。工場における生産プロセスの可視化、生産設備の稼働状況の監視、製品品質の向上などを目的とするアプリケーションのロジックを標準のコンテナにパッケージ化してIoTソリューションをスケールアウトし、それらのコンテナを任意のデバイスにデプロイして、全てをクラウドから監視できるようにするものだ。
では、肝心のエッジデバイス側の対応の動きはどうだろうか。IoTゲートウェイの第一人者として注目されているのがぷらっとホームだ。IoTゲートウェイとは、システムごとの目的に応じたさまざまなセンサーやデバイスを所定のクラウドやホストコンピュータなどと接続するための中継装置で、IoTの通信に必要なデータの収集、加工、プロトコル変換、伝送などの処理を担う。同社は2014年9月に業界を先駆けてIoTゲートウェイ「OpenBlocks IoT BX1」をリリースし、以降も製品ラインアップを拡大しつつ実績を重ねてきた。
ぷらっとホームがOpenBlocks IoT Familyを開発するに至った背景には、どんな経緯があるのだろうか。1993年に創業し、LinuxおよびFree BSDのパッケージの輸入販売を開始した同社は、もともと自社製コンピュータに強いこだわりを持っており、2000年にLinux OSを搭載した手のひらサイズの小型サーバ「OpenBlocks」を開発し、販売を開始した。耐熱、耐じん設計に加えて超低消費電力を追求するなど、24時間365日の常時稼働が求められる生産現場にも適用可能な仕様を備えたものだ。OpenBlocks IoT Familyは、その名の通り同サーバをIoTゲートウェイ用途に最適化した製品である。
ぷらっとホーム IoTサービス部の部長を務める後藤俊也氏は、その開発の狙いをこう語る。「IoT市場は組立製造からプロセス製造、官公庁、公共/公益、クロスインダストリーへと広がりを見せていますが、かつての『M2M(Machine to Machine)』と呼ばれた時代と比べるとシステム規模の小さな案件も増えており、要するにロングテール構造化しています。そうした中で、従来のように専用品を使用し、時間をかけて設計やPoC(概念実証)を行っていたのでは、いつまでたっても実用化に踏み出せず、コストが膨らむばかりでプロジェクトは頓挫しかねません。重要なのは『汎用品をうまく使いこなすと』いう逆のアプローチであり、OpenBlocks IoT Familyがそのニーズに応えます」(後藤氏)。
IoTゲートウェイソフトウェア「FW3.3」が提供する最新機能
OpenBlocks IoT Familyは、第1弾のOpenBlocks IoT BX1から2017年12月発売の「OpenBlocks IoT VX2」までさまざまなラインアップがある。そして、2019年1月にリリースされた、同ファミリーの全製品に適用可能な最新のIoTゲートウェイソフトウェア「FW3.3」は、さまざまな特長を兼ね備えている。以下に、順を追って紹介していこう。
コマンドライン操作不要の「Web UI」
Linux上に実装されたFW3.3ならではの操作性も優れている。IoT通信機能の操作と設定をはじめ、センサーやビーコンを検索、ペアリングする作業、各社クラウドサービスとの接続設定などをGUIベースで行えるWeb UIを搭載している。IoTを本番展開する際に従来のIoTゲートウェイでは必須とされたコマンドライン操作の知識は不要で、エンジニアリングの負荷軽減を図る。
リモートでの監視やメンテナンスが可能な「AirManage2」
OpenBlocks IoT Familyでは、管理者がIoTゲートウェイを遠隔地からセキュアに設定、監視、メンテナンスを実施できるようリモートマネジメントサービス「AirManage2」を提供している。例えば、複数の拠点に設置されたOpenBlocks IoT Familyが正常に動作しているのかどうか特定イベントの発生を監視したり、OSやセキュリティのアップデートを行ったりすることが可能。また、AirManage2からFW3.3のWeb UIにもリモートアクセスすることができ、IoTシステムの設置、運用コストの削減に役立つ。
「PDHMS」で柔軟なエッジコンピューティングを実現
IoTゲートウェイ内部におけるアプリケーションモジュールのプロセス間通信を、柔軟かつ高速で実現できるよう設計されたシステムアーキテクチャが「PDHMS(Plat’Home Data Handling Module System)」だ。エッジ側に多様な機能をもったアプリケーションモジュールを実装することを可能とし、柔軟なエッジコンピューティングを実現する。
具体的には「IoTセンサー・デバイス パートナープログラム」のもと、パートナー各社が提供するデバイスを標準サポートする。また、産業機器やセンサーについては、工場やビル向けのスマートセンシングのデファクトスタンダードであるModbus(RTU/Ethernet)を標準サポートしている。さらに、国内の高圧スマート電力量メーターと接続する「ECHONET Lite」および「ECHONET Lite AIF」認証を取得しており、スマートシティーやスマートビルディング向けIoT市場への対応を強化した。
加えてクラウド上のインスタンスやWebサーバとの双方向通信に対応した通信アプリケーションとして「PD Repeater」を提供。マイクロソフトの「Azure」が提供する「Azure IoT Hub」や「Azure Event Hubs」をはじめさまざまなクラウドとの通信連携サービスに対応し、収集したデータをプログラミングレスで各種クラウドへデータを送信できる。この他、クラウド側からのデータ受信および通信切断時のデータ再送信などの機能も備えている。
IoTゲートウェイでDockerによるアプリケーション管理を実現
サーバやクラウドなどのアプリケーション実行環境として採用が広がっているDockerだが、FW3.3ではメモリやプロセッサの処理能力が限られるIoTゲートウェイでありながらDockerのサポートを実現している(対応機種はOpenBlocks IoT VX2のみ)。DockerコンテナのマネジメントをFW3.3のWeb UIで行える他、Dockerイメージ共有サービス「Docker Hub」で公開されているDockerイメージをデプロイする機能や、ユーザー自身で構築したDockerイメージのプライベートレジストリからデプロイする機能を搭載している。Dockerコンテナのデプロイや起動、停止、リソース割当などの操作も同様にWeb UIから行うことが可能だ。
また、インテルのコンピュータビジョン開発ソフトウェア「OpenVINOツールキット」および各種ライブラリを最適化し、Dockerコンテナイメージを用いたエッジ側での画像認識を容易に行えることも大きな特長になっている。
マイクロソフトとの協業で実現した「Azure IoT Edgeマネジメント機能」
OpenBlocks IoT FamilyとFW3.3は、マイクロソフトのAzureのさまざまなサービスと連携することで、IoTゲートウェイによるエッジコンピューティングの力を最大限に発揮させられる。例えば、OpenBlocks IoT VX2は、マイクロソフトが2018年6月にリリースした、クラウドとエッジデバイスのシームレスな連携を可能にするAzure IoT EdgeのGA(General Availability:一般提供)版に正式対応した。OpenBlocks IoT VX2であれば、「Azure Certified for IoT」の正式なエッジ対応製品として認証されており、安心してAzure IoT Edgeを利用できる。
マイクロソフトとの協業を進める中で実現された代表的な機能の1つが「Azure IoT Edgeマネジメント機能」である。Azure IoT Edgeのセットアップ、起動と停止、ステータス状況確認といった操作および管理を、FW3.3のWeb UIに一元化して行えるようにする。また、さまざまなデータ処理をOpenBlocks IoT Family上で実行することができ、PDHMSとAzure IoT Edge間のデータ連携を行うことも可能となった。「PDHMSで収集したセンシングデータの解析など、Azure IoT Edgeを利用したIoTエッジコンピューティングを強力に支援します」と後藤氏は強調する。
さらに、先述のDocker管理とAzure IoT Edgeマネジメント機能の合わせ技で、より高度なIoTエッジコンピューティングが可能となる。後藤氏は「Azure Machine Learningなどによる機械学習をAzure上で評価し、十分な効果を得られると判断したならば、そのモジュールを丸ごとDockerコンテナイメージにまとめてエッジ側に持っていけるのです。今後、画像認識系のオープンデータなども整ってくれば、自社の製造工程や製品、サービスに関わる画像の特徴的な部分だけを追加してエッジ側で学習させた上で、周辺環境をリアルタイムで認識する各種機器の自動走行、製造装置の外的変化を捉えた予防保守、不良品の検知といったAI活用にもより簡単に乗り出していけるようになると見ています」と後藤氏は語る。
そして、このマイクロソフトとのパートナーシップの延長線上で期待が高まるのが「IoT Plug and Play」などの新しいテクノロジーへの対応だ。IoT Plug and Playは、2019年4月開催のマイクロソフトの年次イベント「Build 2019」で発表されたもので、同サービスの認証デバイスはMicrosoft Azureエコシステムとのシームレスな互換性が確保される。IoT Plug and Playの対応デバイスを選択することで、IoTエッジコンピューティングにおけるエンジニアリングやインテグレーションのコストを削減し、システム本番稼働までの時間を大幅に短縮することができる。
ぷらっとホームは、有力エッジデバイスベンダーとしてこのIoT Plug and Playの開発に関わり、マイクロソフトとの連携を深めてきた。その結果として、Build 2019におけるIoT Plug and Playの発表時にも先行対応ベンダーの1社として紹介されている。「当然、ぷらっとホームとしてもこれらの新テクノロジーの動向は常に注視しています。お客さまからのニーズ次第となりますが、いつでも対応できるように準備を整えています」と後藤氏は語る。
成長するIoTエッジコンピューティングのインフラを提供する
ここまで、OpenBlocks IoT FamilyとFW3.3を中心として、IoTデバイスやAzureなどのクラウドの連携を含めたぷらっとホームの取り組みを俯瞰してきた。その根幹にあるのは、IoTゲートウェイ機能、IoTゲートウェイリモートマネジメント機能、IoTエッジコンピューティング機能など、「IoTデータの伝送に必要な機能を全てパッケージ化して提供する」という一貫した目標だ。
同社は、データ取得からデータ処理、データ活用、AI学習・分析、社会利用に至るまで、IoTのライフサイクル全体を捉えつつ、自動運転やヘルスケア、地方創生(観光集客)などのデータプラットフォーム構築を視野に入れているのだ。後藤氏は「成長するIoTエッジコンピューティングのインフラを提供することが、今後に向けたぷらっとホームのビジョンです」とし、「進化を続けるOpenBlocks IoT Familyが、より早く、より確実なお客さまのIoTシステムのインテグレーションをお手伝いします」と述べている。
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IoT時代に注目されるエッジコンピューティング、ゲートウェイ選びのポイントは
IoTセンサーデバイスを基盤とし、あらゆるモノをネットワークにつないで業務効率化を実現するエッジコンピューティング。その中核となるIoTゲートウェイには、構成の変化に対する柔軟性と、長期運用可能な安定性が求められる。
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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年6月30日