電子楽器のローランドはなぜ“世界初”の業務用映像機器を開発できたのか:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(12)(1/5 ページ)
日本が誇る世界的な電子楽器メーカーのローランド。同社が業務用の映像製品も手掛けていることはあまり知られていないが、このほど“世界初”の機能を持つ4K/HDRスイッチャーを投入することとなった。同社はなぜ業務用映像製品を手掛けるようになり、“世界初”の製品を投入するに至ったのか。小寺信良氏が話を聞いた。
ローランドと言えば、日本が誇る電子楽器の世界的なメーカーである。多くの楽器メーカーがアコースティック楽器にその源流を置くのに対し、ローランドは最初からエレクトロニクスありきで楽器を作ってきた、シンセサイザーの老舗ブランドだ。もともとはアコースティックが当たり前だったピアノやドラムの分野でも電子化で高い技術を持ち、世界的に高いシェアを有する。
そのローランドが業務用の映像製品を作っていることは、一般的にはあまり知られていない。業務用というと放送機器のイメージだが、ローランドの主戦場はそこではなく、音楽イベントやネット放送向けという、独特のポジションを築いている。
そして、2019年6月に発売を予定している製品が「V-600UHD」だ。同社初となる4Kスイッチャーであるが、HDRにも対応し、さらにはHDRからSDRへの変換機能も内蔵するという。
スイッチャーとは、複数の映像ソースをリアルタイムで切り替えて1つのコンテンツを作るための装置だ。テレビやネットの放送業務には欠かせない。HDRは、ご存じの方も多いと思うが、4K放送フォーマットの中に組み込まれたハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range)規格で、高輝度、高色域がウリだ。一方のSDRは、現在の映像製品で一般的に使われているスタンダードダイナミックレンジ(Standard Dynamic Range)である。
4K/HDRは放送業界でも最先端のフォーマットであり、スイッチャーも大型製品がひしめいているが、コンパクトモデルというのはまだ珍しい。さらに、HDRからSDRの変換機能をスイッチャーに内蔵したのは“世界初”となる。今回は、ローランドが映像機器を手掛けることになったきっかけや、今回の“世界初”の取り組みを取材すべく、ローランドの浜松研究所(浜松市北区)を訪ねた。
お話を伺ったのは、ローランド RPG第1開発部 執行役員の志水貴光氏、同部の課長を務める笠井良秀氏と辰井義信氏の3人である。
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