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流体解析を行う上で必要なこととは? 【その1】解析領域初心者のための流体解析入門(2)(1/3 ページ)

流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は“流体解析を行う上で必要なこと”として、解析領域について取り上げる。また記事後半では、流体解析ソフトウェアを用いた簡単な作業の流れについても紹介する。

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 連載「初心者のための流体解析入門」の第2回。今回からもう少し具体的な内容に入っていきたいと思う。流体に限らず、解析に関する解説記事はとかく難しくなりがちなので、入門者、初学者を対象とした本連載としては、できる限り専門的な内容には立ち入らないように配慮したい(⇒前回の内容はコチラ)。

 また、ここからしばらくの間の記事構成だが、前半部分で流体解析に必要な考え方を解説し、後半部分で例題的な解析を行う流れとしたい。前半で解説した内容の理解を、後半の実践を通じてより深めてもらう狙いがある。ぜひ最後までお付き合いいただきたい。

流体解析に必要な決めごと

 さて、流体解析を行う上で必要な条件、決めておかなければならないこととは何だろうか。先に構造解析のことを考えてみよう。構造解析の経験をある程度お持ちの方であれば、これはすぐに答えられる話だ。

 1つ目は解析のための「ジオメトリ」だ。計算したい対象の形状をまず作成する。設計者CAEで考えれば、3D CADで作ったジオメトリそのものだといってもよい。実際に有限要素法のソルバーが相手にするのはメッシュだが、いずれにしても3D CADで作った形状を基にメッシュを作成するので、ここでは3D CADで作ったジオメトリとしておこう。

 形状が分かったところで、2つ目はその形状が何でできているのか? いわゆる「材料物性」である。線形の応力解析の場合は比較的シンプルで、ヤング率とポアソン比、もし重力を扱うのであれば質量密度くらいだろう。熱伝導解析も定常解析ならば熱伝導率くらいで問題ない。もちろん、非線形領域でさまざまな依存性を持つなど、厄介なケースもあるが、設計過程で扱う物性は通常シンプルなことが多い。

 そして、最後の3つ目が「境界条件」だ。境界条件は、特に設計者CAE系のソフトウェアの場合、拘束条件と荷重条件に分けられるが、どちらにしても境界条件だ。簡単にいえば、前述の1つ目と2つ目の条件で定義された物体がどのように固定されていて、どのような荷重がかかっているのかという情報だ。当たり前だが、境界条件がなければ何も事象は起きない。

 以上、これら3つの情報(条件)が適切にそろって、初めて解析を実施できるわけだ。

 では、本題の流体解析の場合はどうだろうか。実は、基本的には先の構造解析と同じといえる。

(1)解析領域

 流体解析を実施する際、2つの状況が考えられる。一つはパイプの中を流れる水などを解析する“内部流れ”と、自動車や航空機といった物体の外側を流れる空気などを解析する“外部流れ”だ。これらに関わる流体について、どの程度の広がりで解析するのかを決める必要がある。

(2)材料物性

 流体解析においても材料物性は必須である。その流体が空気なのか、水なのか、油なのかが分からないと始まらない。構造解析において線形の応力解析ならば、ヤング率とポアソン比と説明したが、流体であれば密度や粘性といった幾つかのパラメーターで定義される。

(3)境界条件

 (1)で定義した解析において、(2)で定義した流体が、ある条件で流入し、また別の場所から流出していく。つまり、そのような情報を境界条件として定義する必要がある。

 これらに加えて、乱流モデルについても説明しておこう。

(4)乱流モデル

 別の機会で、あらためて詳しく解説する予定だが、流れには「層流(Laminar Flow)」と「乱流(Turbulent Flow)」とがある。本連載で扱う空気や水などで、さまざまなものを解析しようとすると、それらがほぼ乱流であることに気が付くはずだ。この乱流をどう扱うのかというのも流体解析ソフトウェアの重要なポイントとなる。

 さて、これら全てを本稿だけで細かく解説するには無理があるので、今後数回に分けてこれらを解説していく。というわけで今回は、解析領域について掘り下げて説明する。

解析領域について

 では、飛行機を題材に考えてみよう。飛行機の性能を調べようと思い、流体解析をする場合、解析領域をどのように考えたらよいだろうか。当たり前だが、飛行機の周りの空気はどこまでも広がっているので、広くとろうと思えばいくらでも広く取れるのできりがない。つまり、どこかで切り取ってやる必要がある。

 そうかといって、領域を狭く取り過ぎるとろくなことがない。飛行機などが高速で通り過ぎると、その周りの空気はその影響を受けて乱される。ただし、十分に離れたところであれば、その影響はあまり受けないし、飛行機の通り道の空気であっても、飛行機がある程度離れてしまえば、もはや飛行機の影響はないと考えられる。つまり、飛行機の周りの流れを解析したいのであれば、その飛行機の影響を受けない範囲ギリギリまで解析領域を広げてやる必要がある。これよりも狭く解析領域を取ると、実際には流れの変動が生じている箇所が解析領域の外になってしまい、流れを正確に予測できなくなる。

図1 解析領域 外部流れ
図1 解析領域 外部流れ

 内部流れでも解析領域を当然確保する必要がある。パイプの中のどの領域に着目して流れを解析するのか、というのがその領域になる。要するに「どこを解きたいの?」という意図が、そのまま解析領域の定義につながってくる。

図2 解析領域 内部流れ
図2 解析領域 内部流れ

 構造解析では、対象物がはっきりしたらそこにメッシュを張る。そして、そのメッシュの粗密が解析結果の精度や計算負荷に大きな影響を与える。これは流体解析も同じだ。

 解析領域の空間が決まったら、そこにメッシュを張る。やはり、粗密は精度と計算負荷に大きな影響を与える。もちろん、細かくメッシュを切れればそれにこしたことはないが、作業PCの性能が低いと、メッシュさえ切れずにPCごと(ソフトウェアがではない)固まってしまうこともある。また、メッシュが切れたとしても、むやみに細かく切り過ぎると、解析結果が出るまで膨大な時間を要してしまう。もっとも、このあたりは作業PCのスペック(メモリやCPU)勝負の世界になってくるので、また別の機会に考えてみたいと思う。

 ということで、解析領域の基礎解説はこれくらいにして、記事後半(次ページ)では約束通り、解析の簡単な流れについて取り上げていく。

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