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製造業とブロックチェーンとIoTの深イイ関係製造業ブロックチェーン活用入門(後編)(1/3 ページ)

「インターネット以来の発明」と言われ、高い期待が寄せられているブロックチェーン。本稿では、製造業向けにブロックチェーン技術や適用範囲、さらに活用メリットを前後編に分けて解説する。後編では、製造業におけるブロックチェーン導入のメリットと、今後の展望を考察してみたい。

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⇒製造業ブロックチェーン活用入門の前編はこちら

 前編では、ブロックチェーンには「トレーサビリティー」「透明性」「耐改ざん性」「無停止」「低コスト」という特徴がある、と紹介した。これらのうち、製造業で特に期待されているのは、製品やサービスライフサイクル全体に関係する「トレーサビリティー」「透明性」「耐改ざん性」だろう。

製造業のサプライチェーンとブロックチェーンに期待される役割
製造業のサプライチェーンとブロックチェーンに期待される役割(クリックで拡大)

 2018年は多くの製造業に関わる企業で、検査データの偽装や改ざんが行われていたことが発覚した。こうした不正は、ブロックチェーンで管理すれば、かなりのレベルで――100%とはいえないが――防止できる。

 例えば、材料の加工や組立を行った後で検査を実施した際に、検査結果をそのまま「耐改ざん性」のあるブロックチェーンに格納すれば、検査結果を改ざんできなくなる。つまりは検査結果の偽装ができなくなるわけだ。また、検査結果はブロックチェーンネットワークに参加している関連企業間で共有される。仮に検査結果を改ざん(検査結果を修正)しようとしても、改ざん(修正)行為そのものもブロックチェーンに残ってしまうのである。

自動車産業におけるブロックチェーンの活用イメージ

 ここからは、自動車を例にして、製造業のサプライチェーンに関わるそれぞれのフェーズで、ブロックチェーンがどのように活用できるのかを見ていこう。以下の図は、自動車の製造/出荷ライフサイクル(上段)と保守/維持管理のライフサイクル(下段)を示したものだ。

自動車の製造/出荷ライフサイクルと保守/維持管理のライフサイクル
自動車の製造/出荷ライフサイクル(上側)と保守/維持管理のライフサイクル(下側)(クリックで拡大)

 まずは製造の部品調達を見てほしい。前編でも紹介した通り「参加者全員が情報共有できる」という特性を活用すれば、サプライチェーンの各階層(Tier)の部品在庫情報や、デッドストックなどの情報を共有できる。「どこに」「何が」「どのくらいあるのか」だけでなく、「誰が」「どのように管理していたのか」も把握できるのが特徴だ。これにより、偽造品混入チェックはもちろん、出荷情報の追跡や存在証明、販売店到着予測なども実現できるようになる。

 さらに、これまで系列会社の1社だけに製品を納入していたサプライチェーン下層の下請け(Tier2以降に属する)企業は、従来は取引がなかった他系列の企業にも製品を納入できる可能性が広がる。ブロックチェーンで在庫状況と価格、他社と比べて強みとなる技術スキルを公開、共有していれば、買い手側が検索し、取引を打診してくる可能性もある。自然災害などが発生した場合の調達においても融通が利くようになる。

 また、各部品の製造番号を関連付けしておけば、リコールや修理対象となった場合に、「どの車種に欠陥部品が供給されたのか」「欠陥部品のサプライヤー元はどこなのか」が特定でき、「いつ、どのお客さまに、どの代理(販売)店を通じて欠陥部品が組み込まれた自動車が販売されたのか」までが追跡できる。効率的に問題を特定できれば、作業時間の短縮による人件費の削減が期待できるというわけだ。

 一方、製品の保守や維持管理の観点からは、IoT(モノのインターネット)と連携させることで、製品の稼働状況や整備情報を収集し、劣化部品などの交換時期や経年による故障予兆をユーザーに告知できるようになると期待されている。

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