TPP発効による知財への影響は?「国内製造業にとってメリット大きい」:知財ニュース(1/2 ページ)
日本弁理士会が東京都内で記者会見を開催。同会会長の渡邉敬介氏による活動報告を行うとともに、2018年12月末に発効したTPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に伴う知財への影響について説明した。
日本弁理士会は2019年1月17日、東京都内で記者会見を開き、同会会長の渡邉敬介氏による活動報告を行うとともに、2018年12月末に発効したTPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に伴う知財への影響について説明した。
渡邉氏は「日本企業数の97.7%を占める中小企業に知財を活用してほしい。会長に就任した2017年度からそのための施策を進めてきた」と語る。代表的なのが全国で知財セミナーを開催する「知財広め隊」だ。2017年度に55カ所、2018年度に53カ所(予定)で開催しており、2年間で108カ所にのぼる。また、これまでも実施してきた「弁理士知財キャラバン」や、特許庁が主催する「巡回特許庁」との連携も進んでいるという。
また2019年は、国内で弁理士制度が始まって120周年を迎えることになる。2019年7月1日には東京都内で記念式典を開催する予定だ。
日欧EPAやRCEPのひな型にもなるTPP11協定
渡邉氏の活動報告に続いて、TPP発効に伴う知財への影響について説明したのが、三浦法律事務所 パートナー弁護士・弁理士の松田誠司氏だ。松田氏は、これまでに特許庁の法制専門官も務め、TPP関連の法案作成にも携わったことがある。
トランプ政権への移行により米国が脱退し、加盟国が12カ国から11カ国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)になったTPP11協定が発行したのは2018年12月30日である。これに伴って、特許法を含む各種法令も改正された。
松田氏が挙げた、TPP発効に伴う知財への影響のポイントは2つ。1つは、国内の産業財産権制度の運用への影響は限定的なこと、もう1つは海外における国内企業の知的財産権保護が期待できることだ。グローバル展開が必要な国内の製造業にとって「デメリットは限定的であり、メリットの方がはるかに大きい」(松田氏)という。
TPP11協定は、モノの関税のみならず、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野において21世紀型のルールを構築することを目的としている。中でも知的財産章(18章)は、知的財産権の高い水準の保護や、その講師を定める国際条約として重要な意義を持つ。松田氏は「TPP11協定の内容は、アジア太平洋地域における21世紀型ルールのひな型になり得る。今後発効する日欧EPAや、交渉が進むRCEP(東アジア地域包括的経済連携)もTPP11協定が基準になるのではないか」と説明する。
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