深掘りの実践と天気予報:IoTのイノベーションは問題解決から(6)
最適なソリューションを選択するためには、「起こり得る全ての原因」を洗い出し、「問題の深掘り」をすることによって問題の本質を見つけることがとても重要です。今回はその「深掘り」の方法を実践に沿った形で解説していきます。
前回「深掘りによるIoT実現の種さがし」は、最適なソリューションを選択するためには、「起こり得る全ての原因」を洗い出し、「問題の深掘り」をすることによって問題の本質を見つけることがとても重要になるとお伝えしました。今回はその「深掘り」の方法を実践に沿った形で解説していきます。
日常生活において「急な雨に困った」という経験はないでしょうか? 一見どうしようもないようなこの問題も「なぜ?」を使った深掘りによって原因を探すことでソリューションを見つけることができます。
それでは、やってみましょう。
「急な雨に困った」の深掘りは「なぜ、急な雨に困るのか?」から始まります。「傘を持っていなかったから」が私の考えた答えです。次の「なぜ」は「なぜ、傘を持っていなかったのか?」、その答えは「雨が降ると想定していなかったから」となります。
続いて、「なぜ、雨が降ると想定していなかったのか?」となるわけですが、ここできっと答えが分かれるでしょう。「天気予報を見ていなかったから」「天気予報が外れたから」「天気予報が外れると想定していなかったから」の3つの原因が考えられました。
ここからはこの3つをそれぞれ深掘っていきます。
「天気予報を見ていなかったから」に対して「なぜ、天気予報を見ていなかったのか?」と深掘ると「別のことに気を取られて、天気予報を確認するのを忘れていた」「雨が降らないと思い込んで天気予報を見なかった」「忙しくて天気予報を見る暇がなかった」など、人の意識による原因が見つかりました。
一方、「天気予報が外れたから」はどうでしょうか、深掘っていきましょう。「なぜ、天気予報が外れるのか?」に対して考えられる原因は「天気予報は万能ではないので予報が外れた」「天気予報でカバーできない、例外的なピンポイントの雨に遭ってしまった」「天気予報が何時間も前の予報だったので、持っている情報が古くて外れてしまった」といったところでしょうか。ここでは天気予報の限界についての原因が多いですね。
最後に「天気予報が外れると想定していなかったから」を深掘りします。「なぜ、天気予報が外れることを想定していなかったのか?」に対して「天気予報が万能だと信じ込み、外れるとは思っていなかった」「天気予報以外に情報がなく、天気予報を信じるしかなかった」「朝は晴れていたので、まさか天気予報が外れるとは思わなかった」「これまでの経験から、天気予報は外れないと思い込んでいた」あたりが考えられます。経験による判断が原因となっていますね。
このように「なぜ」をたどると実に多様な原因が見えてきました。
「『急な雨に困る』ことを解決する」では万能の“魔法のつえ”が必要になりますが、それぞれの原因に対してのソリューションを考えるとなれば、この一見無謀な問題も解決できそうな気がしませんか? 他にも考えられる原因はまだあると思いますが、いったん、挙がった原因のグループ分けをしてみましょう。細かな原因に端的すぎる解決策を開発しても需要は少ないので、ある程度広い範囲をカバーするソリューションを提供し、求められる製品やサービス、仕組みを創りましょう。
今回は主に、以下のような「人の意識」「情報不足」「経験測」「天気予報の限界」という4つに分けることができます。
- 「人の意識」「経験則」が原因:天気予報が自動で届くスマートフォンのアプリケーションを開発するなどの解決策
- 「情報不足」が原因:センサーをいたるところに設置して誰にとってもピンポイントに正確な居場所の予報を即時入手できるような、より正確にリアルタイムで天気予報を伝える仕組み
- 「天気予報の限界」が原因:予報が外れたときの対策を目的とした解決策、例えば、各所で傘を借りられる仕組み
原因別に解決策を考えれば、IoTも含めて有効な解決策が見えてきましたね。では分類はどうやって行ったのかといいますと、「帰納法」という手法を使用しました。
次回はIoTを生かす上での、この「帰納法」の具体的な手法についてお話したいと思います。(次回に続く)
筆者プロフィール
株式会社VSN 馬場 秀樹
2000年にVSNに入社。インフラエンジニアとしていくつものプロジェクトに参画。VSNの“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」の構想メンバーであり、一流コンサルタントより問題解決手法の教示を受け、多くの問題解決事案に携わる。派遣会社でありながら、担当した事案には、数億円規模の売り上げ向上につながった例も。
現在は、同社「経営イノベーション本部」にて今後の事業の根幹を担うVIをさらに加速させるべく、事業計画の立案や浸透・推進を行う。
株式会社VSN https://www.vsn.co.jp/
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