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作業時間の実測値を標準時間に変える「レイティング」とはよくわかる「標準時間」のはなし(8)(2/3 ページ)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第8回は、ストップウォッチ法などで実測した作業時間を標準時間として扱うのに必要な「レイティング」について説明する。

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4.レイティングの種類

 レイティング方法の善しあしは、結果の正確性にあります。いつ誰が判定しても結果の一致性が得られるものでなければなりません。また、作業者にもよく理解されるものでなければならないので、単純性が要求されます。そして、具体的な判断の基準を提供してくれるものでなければなりません。

 レイティングの方法は、訓練を受けた観測者の判断により決めようとする方法が最も広く行われており、次の方法がよく用いられます。

  1. レベリング法(Leveling)
  2. オブジェクティブ・レイティング法(Objective Rating)
  3. スピード・レイティング法(Speed Rating)
  4. シンセティック・レイティング法(Synthetic Rating)

4.1 レベリング法(平準化法)

 この方法は、各種の方法が普及するまでは唯一の方法とされ、一般に広く利用されていました。この方法では、作業速度は、技能、努力、作業条件、安定性の4つの要因によって影響を受けるという考え方で、それぞれの要因を標準の水準に換算することによって、正味時間を決めようとするものです。4つの要因の意味は次の通りです。

  1. 技能:与えられた作業に対する熟練の程度
  2. 努力:有効に働こうとする精神の表れ
  3. 作業条件:温度、振動、照度、騒音など(直接的に影響を及ぼさない治工具の不備、材料の悪さなどは含めない)
  4. 安定性:材料の良否、治工具の状態、観測の誤差などによる同一の要素作業に対する時間値のバラツキの程度

 これらの作業速度を変化させる要因について項目ごとに成績を“最優、優、良、普通、可、劣”の6段階に分けてレイティング係数を決めます。技能努力については、さらに細分化して評価します、ここで注意すべきことは、“普通”の段階は単にその会社、あるいは社会的な平均を表すものではなく、それが技能であったならば、一定の訓練をへた者が持っている正常な技能水準を意味します。

 標準作業速度を1.00とし、対象作業を4つの要因について評価して、該当する各係数を加算していきます。そのレイティング係数によって作業時間の観測値を修正して正味時間を求めます。この手法は作業方法の違いによって、どの評価に位置する作業であるのかの判定に相当の訓練を必要とします。また、この方法は、要因間の重み付けや評価間の係数の設定にやや論理性に欠きますが、簡便なためにしばしば用いられます。

 先に説明しました4つの要因について、それぞれについて評価した後、表3のレイティング係数表からその係数を求め、それぞれの代数和でレイティング係数を算出します。表4の例を参照してください。

表3
表3 レイティング係数表(クリックで拡大)
表4
表4 レイティング係数の算出例

4.2 オブジェクティブ・レイティング法(客観的レイティング法)

 この方法は、作業の困難性に対する速度の修正を単に経験や勘に頼らず、数値表で修正するところに特徴があります。この方法は、レイティングの過程で2段階に分けます。

〔第1段階〕

 観測者は、作業の困難度や作業条件などの作業内容には無関係に、一切考慮することなく、単に速度のみの評価を行います。

〔第2段階〕

 難度調整係数によって作業の困難度を評価して調整する方法です。「使用される身体部位、足踏みペダルの状況、両手の同時動作、眼と手の調整の必要性の度合い、物の取扱いにおける“注意”の要否の度合い、重量または抵抗」という6つの要素について、第2次の調整を行います。

 このように2段階に分けることによって評価に客観性をもたせています。この方法では、難易度調整に取り上げている諸条件の妥当性や係数値の信頼性に問題はあるものの、最近、一般的に用いられるようになった方法です。難易度係数は、次のような手順で用います。

  1. 各要素作業につき、難易度調整係数の各ファクターを評価し、各ファクターについての求めた値それぞれの代数和で第2段階の難易度調整係数を求めます
  2. 加算した結果の値を、作業時間観測時に第1段階として行った速度レイティング係数に乗ずる

レイティング係数=速度レイティング係数×(1+難易度調整係数)

 例えば、1.6分という平均観測時間値が得られたとします、速度のみのレイティング係数80%、第2段階の難易度調整係数34%の事例作業における難易度調整係数は以下の通りであったとします(表5、表6)。

種類番号 ファクター 参照記号 調整係数(%)
1 使用身体部位 E 8
2 足踏みペダル F 0
3 両手作業 H 0
4 目と手の調整 J 2
5 取扱い上の注意 P 2
6 重量 22
第2段階の難易度調整係数 34%
表5 事例作業の難易度調整係数
表6
表6 難易度調整係数(クリックで拡大)

 従って、求める正味時間は、[正味時間=1.60×0.8×(1+0.34)=1.715分]となります。

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