VR空間で夜間ドライブも忠実再現して体験、自動運転システムの開発支援に:CAEニュース
アンシス・ジャパンは2018年11月16日、同社傘下の光学シミュレーションソフトウェアを開発するOPTISに関する記者説明会を発表した。2018年5月にアンシス本社はOPTISを買収。
アンシス・ジャパンは2018年11月16日、光学シミュレーションソフトウェアを開発するOPTISに関する記者説明会を発表した。2018年5月にアンシス本社はOPTISを買収。「OPITS」は光の特性、ヒューマンビジョン、物理現象を組み合わせた複合的な光学シミュレーションが可能で、2015年に買収したGENESISの技術を用いた音響シミュレーションも組み合わせられる。併せてVR(仮想現実)によるイマーシブな(没入感がある)環境も提供する。OPTISはアウディ、ベントレー、フォード、トヨタ自動車、日産自動車、本田技術研究所、スバル、マツダ、ダイハツ工業など大手自動車メーカーや、自動車向け部品サプライヤーなどをユーザーに持つ。OPTIS製品は自動車の他、航空機やドローン、ヒューマノイドといった「動くもの」全般に適応できるとしている。
同社製品は汎用CAEの「ANSYS」ファミリーとして加わり、今後は熱流体や機械、電磁界、振動などのシミュレーションとの連携を促進および強化することで、自動運転技術の開発を支援していく。なおフランスにあるOPTIS本社とOPTIS Japanはアンシス傘下にはなったものの、組織としては独立して継続している。日本法人の代表取締役は芳村貴正氏が務める。また日本法人は光学的な特性と脳の動きとの相関性について慶應義塾大学と共同研究に取り組んでいる。
OPTISはアンシスの取り組むデジタルツインの一部を担うシステムともなる。デジタルツインでは、実機の現実世界とデジタルモデルをつなげ、相互に連携させてシミュレーションを行う。
そのような環境からは「フィジカルよりもデジタルからの学びがより多い」とOPTISの創設者で社長 兼 CEOのJacques Delacour氏は述べ、デジタル世界で分かったことを現実世界に反映させて検証ができ、開発初期段階において人の知識や感覚では想像し切れない事象まで検討材料として取り入れることが可能となる。
OPITSは単なるリアルスティックなCG表現のみではなく、素材の光学特性、レーダーやセンサーから取得したデータなど物理データを用いて、さまざまな物理現象を忠実再現し、現実世界に極めて近いシミュレーションが可能なことを特色とする。ドライブシミュレータとも連携し、バーチャルな走行コースには高精細に3次元測定したデータを用いることが可能だ。
同システムは時間経過により変わる外光の条件や内部の照明を再現し、ミラーやフロントガラス越しの景色の見えづらさなどもリアルに仮想体験できる。太陽光の条件は、地球上の国々の地域差を考慮したデータを用いる。暗闇の中のボタンから漏れたLED光といった詳細な表現の他、暗闇において人の目が徐々に順応する様子まで再現できる。サウンドシミュレーションを加えて、エンジンサウンドも再現できる。その上、それをVR空間によって体験が可能だ。
例えばヘッドランプやテールランプなど車両の光源のテストにおいては、1台当たり数千万円かかる高額なプロトタイプを製作し、何万kmも走行させて合わせ込まなければならなかったが、OPTISでは仮想空間で、しかも設計初期のコンセプトの段階で複数の条件を考慮して検証が可能になる。上記の自動車メーカーのユーザーはCEOや取締役レベルの経営陣をOPTISを用いたVR会議に呼び、素早い意思決定を行っているということだ。
今後は、ANSYSの機械や流体、電磁界などの技術が合わさることで、さらにさまざまなシチュエーションにおける現実の実車走行を想定したシミュレーションが実現することが期待できる。
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