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総計2300機種もの異品種少量生産、パナソニック佐賀工場が生み出す価値とはスマート工場最前線(1/3 ページ)

パナソニック コネクティッドソリューションズ社(CNS社)の直轄工場である佐賀工場は、2カンパニー、6事業部、17カテゴリーにわたる約2300機種もの生産を行っている。この異品種少量生産が最大の特徴となる佐賀工場は、CNS社がモノづくりソリューションを生み出すための課題発見の場にもなっている。

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パナソニックの高橋俊也氏
パナソニックの高橋俊也氏

 2017年4月、パナソニックのAVCネットワークス社は名称を変更しコネクティッドソリューションズ社(以下、CNS社)となった。CNS社は、航空機向け機器を扱うパナソニックアビオニクスや、大規模AVシステムを扱うメディアエンターテインメント事業部、監視カメラシステムなどを展開するセキュリティシステム事業部、ノートPCや頑丈モバイルなどを手掛けるモバイルソリューションズ事業部、CNS社発足に合わせて加わった実装機事業を中核とするプロセスオートメーション事業部などから構成されている。

 CNS社は、これらのB2Bビジネスにより「“お役立ち”のインテグレーター」(パナソニック 専務執行役員でCNS社 社長の樋口泰行氏)を目指して事業を展開している※)

※)関連記事:樋口流パナソニックCNS社改革は3階建て「26年前に辞めた理由を一生懸命排除」

 このCNS社が直接管掌しているのが佐賀工場(佐賀県鳥栖市)だ。同工場の工場長を務める高橋俊也氏は「パナソニックの工場組織は事業部に所属するのが一般的。社内カンパニーであるCNS社が直轄する佐賀工場は、ある意味で“独特のポジション”にある」と語る。その“独特のポジション”は生産品目にも表れている。2カンパニー、6事業部、17カテゴリーという多種多様な製品を生産しているのだ。

パナソニック佐賀工場の主要生産品目である決済端末やICカードリーダーライター
パナソニック佐賀工場の主要生産品目である決済端末やICカードリーダーライター(クリックで拡大)

事業再編の波を経て集積された広範なモノづくりノウハウ

 佐賀工場は、主要な生産ラインが入るI棟、受入検査や製品検査を行うとともに一部の生産ラインが入るIII棟、工作室や材料管理を行うII棟、サービスパーツ倉庫となっているIV棟の4棟から成る。建屋の延床面積は4万3000m2、敷地面積は6万1000m2となっている。

佐賀工場の各建屋の役割工場外観のスケールモデル 佐賀工場の各建屋の役割(左)と工場外観のスケールモデル(右)(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 1964年に九州松下電器の佐賀事業部として発足した後、単三マンガン乾電池、ドットマトリックスプリンタ、レーザープリンタ、電子黒板、スキャナー、電話機、FAX、モノクロ複合機、ビジネスFAXなどを時代の移り変わりに合わせてさまざまな製品を生産。現在は、決済端末やICカードリーダーライターを中心に、ネットワークカメラやAVシステム、アプライアンス社のコードレス電話機や補聴器などを生産している。

 また、九州松下電器を中心に2003年に発足したパナソニック コミュニケーションズ、その後2010年に発足したパナソニック システムネットワークスなど、度重なる事業再編の波を受け続けてきたことも、現在の佐賀工場を成り立たせる要因となっている。「直近10年間でさまざまな製品の生産集約を繰り返してきた現場となり、それらのノウハウが入り交じっている」(高橋氏)という。実際に、6事業場の商材のモノづくりノウハウを保有しており、サブミクロンレベルの接着制度が求められる産業用カメラの光軸調整や、広域監視システムのシステムインテグレーション、スキャナーに求められる多能工モノづくり、補聴器に必要な医療機器製造の認可など幅広い。

 そして佐賀工場の最大の特徴となるのが「異品種少量生産」だ。高橋氏は「家電などの民生品は生産期間が2〜3年、サービス対応まで含めても7年で対応を終えられる。しかし、B2Bビジネスが中核のCNS社が直轄する佐賀工場では、生産終了になるまでの期間が長い製品が多数ある。生産登録している機種は約2300種にのぼり、年間で3回しか生産しない機種がその半分を占め、100台以下のロットの生産が70%に達する」と説明する。

佐賀工場の特徴は「異品種少量生産」だ
佐賀工場生産品目の特徴は「異品種少量生産」だ(クリックで拡大) 出典:パナソニック
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