「社内にいても刺激的」、スマートモビリティ社会に向けたトヨタの布石:CEATEC 2018(1/2 ページ)
トヨタIT開発センター 代表取締役社長である今井孝志氏は、「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16〜19日、幕張メッセ)のカンファレンスで、「コネクティッドで広がるスマートモビリティ社会」と題する講演を行った。
トヨタIT開発センター 代表取締役社長である今井孝志氏は、「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16〜19日、幕張メッセ)のカンファレンスで、「コネクティッドで広がるスマートモビリティ社会」と題する講演を行った。
電気自動車の登場や自動運転車への期待など、ここ最近の自動車業界は“100年に1度の大変革期”と注目されている。その大きな流れの中で、トヨタ自動車はどんな未来を目指すのか。今回は「つながるクルマ」をテーマに、スマートモビリティ社会の実現に向けた取り組みが紹介された。
「電動化」「つながる化」「知能化」
今井氏は講演の冒頭で、最近のトヨタ自動車の動きがかなり活性化し、社員にとっても刺激的であることを告げた。今井氏が社長を務めるトヨタIT開発センターは、トヨタ自動車の外部でIT全般に関するリサーチを担うことを目的として2001年に創設。現在の拠点はシリコンバレーで70人ほどのリサーチャーを擁するが、2019年4月にはトヨタ本社に吸収合併されることが決まっているという。
トヨタ自動車がモビリティカンパニーになることを目指すにあたって、「IT部門がトヨタにとって外の世界ではなく、中の世界だと再定義された」(今井氏)のが、トヨタIT開発センターが吸収される理由だという。また、自動車メーカーとしては、車両の製造販売の枠を超え、社会に目を向けた新しいモビリティの在り方を提案することも務めになっていると今井氏は語る。その核になるのが「電動化」「つながる化」「知能化」の技術であり、トヨタ自動車では2013年ごろからこれらに注目し始めていた。
もはやクルマは「動く通信ユニット」
今井氏は、現在の自動車が非常に多くのデータを扱うため、外部と通信していることにも触れた。例えば、自動車のルーフに設置されるシャークフィンアンテナは、5〜6チャンネルの無線インフラに対してデータの送受信をしている。通信先も多種多様に広がっており、携帯電話機やサービス端末のほか、道路インフラや他の自動車、歩行者、家、街などの社会とのつながりまで拡大していく。
先進運転支援システム(ADAS)は、通信でつながる対象が増えることで実現されている機能の代表だ。このシステムでは、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)専用の無線周波数を使い、道路などのインフラと車両、あるいは車両と車両が通信を行う。これによって、交差点での出会い頭の事故を回避したり、被害を軽減したりする。このシステムは日本では2015年からサービスが開始された。インフラの設置台数はまだまだ少ないが、官民が一体となって普及に力を入れているという。
複数台のクルマによる隊列走行を可能にする協調型のクルーズコントロールも、自動車の通信技術が可能にする機能の一例だ。一般的なクルーズコントロールは、車両に搭載したセンサーによって前の車両の位置を検知しながら車間距離の調整を行う。しかし、それだけではどうしても時間差が発生するため、通信機能を活用する。隊列走行が可能になると、不必要な加減速が発生しなくなり、渋滞の解消や燃費の改善に役立つと期待されている。
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