パナソニックAIS社が提唱する2030年のインタフェースは「時間を生み出す」:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)は、ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」に合わせて会見を開き、2030年に向けてAIS社が想定するインタフェースの在り方について説明した。
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(以下、AIS社)は2018年11月1日、開催中のユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日)に合わせて会見を開き、2030年に向けてAIS社が想定するインタフェースの在り方について説明した。
パナソニック 執行役員でAIS社 副社長 技術担当 兼 技術本部長を務める藤井英治氏が打ち出したテーマは「デジタライゼーションからインタラクティベーション」である。社会全体のトレンドとして「人」「環境」「暮らし」の全てが多様化していく中、価値観も多様化する。藤井氏は「これまでは、機器の性能が向上していくことの価値が重視されてきた。しかし多様化が進むこれからは、人との接点となる、一人一人に合わせるための技術がより高い価値になるだろう」と語る。
スマートフォンの登場以降、1人1台以上の情報端末を持つようになったことで、デジタライゼーション(デジタル化)の波は加速し、生み出されるデータの量は爆発的に増えている。このデータ増加とインタフェースのパラダイムシフトは同期している。1980年代後半から始まったPCの時代は、キーボードやマウスなど、習熟を要するインタフェースだった。これに対して、2000年代以降に登場したスマートフォンは、タッチするだけで操作できる直感的インタフェースを採用している。「iPhoneなどは3回タッチするだけでやりたいことをやれるようになっている。極めて便利なので、少し時間が空くと何となく触ってしまうほどだ」(藤井氏)という。
だがここで問題になるのが、人がどんなときもどんな状況でも、スマートフォンに代表されるデジタル機器への意識の集中が習慣化してしまうことだ。藤井氏は、キャンプに来ているのに全員がスマートフォンを見ている写真、美術館に来ているのにスマートフォンを操作している子供の写真を挙げ「いつでもどこでも気軽に使えるインタフェースであるがゆえに、スマートフォンに没入してしまう事態が生まれている。事実上『人が合わせる』インタフェースといえるだろう。デジタライゼーションが止まることはないが、全てがデータ化される前に、人と技術の関わり方をもう一度ゼロから見直したい」と述べる。
そこで、パナソニックが次の時代のインタフェースになると想定しているのが、「人に合わせる」インタフェースだ。画面や入力作業から解放されることで、人にとって大きな価値となる時間を生み出す点が従来のインタフェースと大きく異なる。このインタフェースを指して、相互作用(Interaction)と活性化(Activation)から考案した造語がインタラクティベーション(Interactivation)である。
インタラクティベーションでは、人の気持ちや生理状態、その人の履歴や状況を把握した上で、人の意図を理解することが重要になる。人の気持ちや生理状態は、ウェアラブルデバイスなどの主観的視点のデバイスを、人の履歴や状況は、監視カメラやスマートスピーカーなどの客観的視点のデバイスを用いる。そして、人の意図を理解する無意識のインタフェースにより、モノと人、サービスと人、人と人のインタラクションが生み出されることになる。
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