パナソニック樋口氏とサントリー新浪氏が語る、日本企業復活の条件:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
パナソニックのユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」のシンポジウムに、同社 コネクティッドソリューションズ社 社長の樋口泰行氏と、サントリーホールディングス 社長の新浪剛史氏、大学院大学至善館 創設者・理事長の野田智義氏が登壇。「日本企業の復活」をテーマとするパネルディスカッションに臨んだ。
パナソニック初の全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日)の2日目となる10月31日のシンポジウムに、同社 専務執行役員でコネクティッドソリューションズ社(以下、CNS社) 社長の樋口泰行氏が登壇。ハーバード・ビジネススクールでともに経営学を学んだ、サントリーホールディングス 社長の新浪剛史氏、大学院大学至善館 創設者・理事長の野田智義氏と、「日本企業の復活〜次なる成長に向けた 変革へのチャレンジ」をテーマとするパネルディスカッションに臨んだ。【訂正あり】
パネルディスカッションは、野田氏がファシリテーターを務め、樋口氏と新浪氏に日本企業が抱える課題や、復活のためのキーワードなどを聞いていく形で進んだ。まず樋口氏は、氷山が浮かぶ危険な海の中を進む船のイラストで日本企業が抱える課題を端的に示した。同氏は「日本人は優秀かつ勤勉で、パートナーを組むうえで信頼に値すると思われている。正しく頑張れば成功しないわけはないはずだが、現状はこのイラストのような状況だ」と語る。
イラストでは、船(=日本企業)は荒波にもまれ穴が開くなど非常事態を迎えているが、船員(社員)はそれに気付かず船の中(社内)のことばかりやっている。一方、企業のトップは今後長く勤めるわけではないことを前提にヘリコプターで逃げようとしており、その横にいる人物は「どうぞお逃げください」ともみ手をしている。「実際に、東京オリンピックまでは何とかなるから、その後は知らないという人はいるかもしれない」(樋口氏)。日本企業を取り巻く状況(=海)は厳しい状況で、船(=企業)も既に穴だらけ、なのに一握りの経営陣を除いてその危険性に気付いていないというわけだ。
新浪氏は、日本企業がこのイラストのような状況に陥っていることに対して「人材育成に課題があった。バブル時代以降、給与分配率を下げ、人材育成費を下げた影響が大きく出ている」と指摘。そして、人材育成に最も効果があるのが「修羅場の経験」として、「小規模で構わないので30代中盤までに自身で意思決定できる場に入り経験を積めるような、人材育成が必要だ」(同氏)と訴えた。
そんな新浪氏が、日本企業復活のポテンシャルとして挙げたのは、欧州メーカーのコーヒーマシンの写真だ。同氏は「前職(ローソン)で欧州企業からコーヒーマシンを購入する際に1台100万円と言われた。そこから値切ろうといろいろ交渉したが、どうやってもまけてくれなかった。日本のモノづくりもこれと同じく、顧客が求める価値への対価をしっかり考えるべきだ」と述べる。
樋口氏は「高い価値がありつつ市場も大きい製品があまりないのは悩ましい。ただ、最近のパナソニックが『何をしている会社か分からない』とよく言われて事自体は、そういった代表的な製品がなく、小さい市場でさまざまなことをやっているからかもしれない」と応じる。新浪氏も「先ほど言ったような小さくとがった組織で経営者人材を育成しつつ、企業はそれらを束ねる形がいいかもしれない。小さい組織で経営を学ぶと、変わることに対して最も保守的な現場のことが分かるし、そういった現場を知った経営者人材がより大きな枠組みの経営をすることで全体を変える力になる」と話す。
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