プリント基板の3D設計は「まだまだこれから」:【週刊】ママさん設計者「3D&IT活用の現実と理想」
まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年10〜11月のサブテーマは『メカの3D設計とエレキの2D設計の連携を追求してみる』です。
まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年10〜11月のサブテーマは『メカの3D設計とエレキの2D設計の連携を追求してみる』です。
皆さんこんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。設計者の目で加工現場を観察して、業務上の人的、物的な諸問題に対して3DとITを使った改善を探る「【週刊】ママさん設計者「3D&IT活用の現実と理想」」。
以前のサブテーマ『3D化とIT化は本当に後継者育成の鍵になるのか」を考える』の終盤では、「これからも生き続ける加工現場のカタチ」として、どこでも3D化とIT化が当たり前になった製造現場の未来予想図までを書いてみました。
今回のサブテーマ「メカの3D設計とエレキの2D設計の連携を追求してみる」では、これまでの加工現場ではなく、電気で動く機械や装置には欠かせない「プリント基板」「電気制御」の設計と機械設計の間にある垣根に視点を移して、合理的な連携について考えていきます。
SCENE 1:プリント基板の3D設計は「まだまだこれから」
もはや“超過密3次元迷路”と言っても過言でないのが、高密度多層、多重積層(IVH)が激化する最近のプリント基板の設計データの姿です。
電子機器の製品サイズの狭小化に合わせてプリント基板の高密度高多層化が進むことで、従来は基板の表面だけに実装されていた部品が基板の内層に埋め込まれる、「部品内装基板」も珍しくなくなっています。とは言うものの、昔も今もプリント基板のデータが、回路の接続情報を2次元のレイヤーを何枚も重ねた「層」にして構成していることには変わりがないので、断面観察すれば3次元形状であることが分かる多層基板であっても、プリント基板の設計の主流は今でも2次元設計なのです。
こうしたプリント基板業界の環境については、2016年の記事「ママさん設計者のモノづくり放浪記」の第6回:地味にスゴイ!プリント基板の実装品質を左右するメタルマスクの中でも少し触れました。あの記事から2年たった今でも、プリント基板の設計環境はそう大きく変わってはいないようです。
プリント基板の設計は2段階で、最初に回路図エディタを使って回路図を作ります。回路図は作ろうとする基板の基礎情報で、目的とする働きのために電子部品同士をどうつなぐかを表しただけの図なので、これは2次元の描画で構わないのです。
回路図が描けたら、次はそれを基にして基板の層構成を検討し、使用する電子部品の形状と高さ、ピン配置などの物理的な制約や実装条件などを考慮しながら外形形状を決めて配線をして、実体に仕立て上げる機能的な設計をします。部品が搭載された後のプリント基板は3次元の物体ですから、この段階で、回路図の2次元情報を実装基板の3次元情報にする設計をするのです。これが基板アートワーク設計です。
基板はケースや筐体に組み付けて使われることから高さ制限を受けやすいので、アートワーク設計ではそれにも配慮します。両面基板(2層基板)までなら、基板そのものの厚さに実装部品を加えた全体高さを考慮すればいいですけど、高多層基板や多重積層基板のアートワーク設計では、基板の内層と基板の表面のどちらについても高さを考慮することになり、複雑な基板になるほど設計者の高いスキルが求められます。でも、設計者が高いスキルを持っていても、なおも進む高密度高多層化、多重積層化の流れの中では、そろそろ2次元の基板CADでは限界かもしれません。
一方で、基板を搭載する側の機械設計は3D化が進んでいるわけですから、アートワーク設計を終えたデータをそのまま3Dモデル化できる基板用3D CADの普及を待ち望む声は大きくなっているのです。
次回は、「SCENE 2:プリント基板設計の3D化は実装工程の効率化につながる」です。(次回へ続く)
Profile
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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