建設現場の無人化がもたらす未来の働き方とは、コマツが語る建設業の将来像:CEATEC 2018(1/2 ページ)
「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16〜19日、千葉県・幕張メッセ)の基調講演に建設機械の大手メーカーであるコマツ 代表取締役社長兼CEOの大橋徹二氏が登壇。「お客様と一緒に実現する、安全で、生産性の高い未来の現場『スマートコンストラクション』」をテーマに、コマツが展開する建設機械ビジネスの新たな姿について紹介した。
「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16〜19日、千葉県・幕張メッセ)の基調講演に建設機械の大手メーカーであるコマツ 代表取締役社長兼CEOの大橋徹二氏が登壇。「お客様と一緒に実現する、安全で、生産性の高い未来の現場『スマートコンストラクション』」をテーマに、コマツが展開する建設機械ビジネスの新たな姿について紹介した。
ライフサイクルが非常に長くコストもかかる建機の特徴
コマツは、安全で生産性の高い、スマートな未来の現場を実現するためのソリューション「スマートコンストラクション」を2015年からパートナー企業とともに推進している。
この背景として、大橋氏は建設機械業界の特性を挙げる。「建設機械の市場規模は台数ベースでは自動車の300分の1、金額ベースでは14分の1の規模である。さらに、ライフサイクルの比較では建機で自動車の5倍、鉱山機械では同約30倍と、非常に長い期間使われているという現状がある」と台数規模が小さい一方で、非常に長い期間使われるという特徴があることを大橋氏は訴える。
さらに、新車代金に対するライフサイクルコストの比較でも自動車が1.1倍なのに対し、建機は2倍、鉱山機械では3倍となるなど、購入時だけでなく長い使用期間の中での関係性が重要になっている。大橋氏は「これらの状況を考えると、長期の使用期間における顧客との信頼関係を築くことが必要であり、さらに、このアフターマーケットを支える代理店との関係性も建機ビジネスにおいては非常に重要である」と語る。
こうした顧客との関係作りの重要性を考える中で、多くの建設会社が抱える課題が見えてきたという。それは「労働力の不足と、安全および生産性の向上であった」と大橋氏は指摘する。
例えば、労働力を見ると、必要とされる建設技能労働者の数は、少子高齢化にもより2026年には128万人不足すると予測されている。これは必要とされる人員の3分の1が不足するというものである。自然災害が多く、インフラの老朽化も進む日本にとっては深刻な問題である。また、建設会社の90%以上が社員数10人以下の企業であり、少人数体制での生産性向上も大きな課題だ。
「これらの問題を、これまでの商品やサービスだけでは解決することは難しい。発想を変えて、顧客の現場でのオペレーションを最適化する仕組みが必要だと考えた」(大橋氏)とし、そこで生まれたのが「スマートコンストラクション」である。
「スマートコンストラクション」の意義
スマートコンストラクションの特徴は、全ての工程の中で、建設機械から人、土まで現場のあらゆるものが、プラットフォーム上で有機的に「つながる」というところだ。生産プロセスに関わるあらゆる「モノ」や「コト」が、デジタルトランスフォーメーションにより、プラットフォームで有機的につながり「見える化」を実現する。
「スマートコンストラクション」により、例えば、従来は人の手で何日もかかっていた工事前、工事後の測量が、ドローンと最新の画像処理技術により、たった1日で完了できるようになったという。さらに、質の面でも、木や建物など不要なものを除去した、高精度な3次元地形データが短時間で簡単に取得できるようになった。
熟練オペレーターの高齢化による技能者不足という課題に対しても、ICT建機を用いることで誰もが、熟練技術者とほぼ同じ精度、スピードで施工可能となる。施工の際に必要な目印となる丁張りを設置する手間もなくなり、周囲で施工状況を確認する補助作業員も必要なくなる。これにより、効率だけでなく安全性も飛躍的に高まったという。
さらに大橋氏は「ICT建機は建設現場の司令塔となり、施工した場所だけでなく、他人や他の建機が施工した場所までも瞬時に高精度の3次元データで測量できる。まさにあらゆる現場の目という存在でもある」とも述べた。コマツではスマートコンストラクションの導入で、現場の課題顧客の目標や課題を理解しながら、安全で生産性の高いスマートな未来の現場を実現することを目指している。
同社によると、このスマートコンストラクションを投入した現場は、ソリューションを立ち上げてからの3年8カ月の間に、国内で6000カ所に達したという。そして、それらの現場からは、さらなる課題が次々に見つかっている。この課題を克服するために、さらにコマツでは異業種との協業により、スマートコンストラクション改革への取り組みへと歩みを進めているという。
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