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IoT活用のための視点(3)「レガシー機器」IoTっていうけど、何すればいいの?(4)

連載第2回では「PDCA」、特に「P」の考え方を取りあげ、活動の取り組み方について考えた。今回は、製造現場のIoTにおける「レガシー機器」の取り扱いがテーマだ。

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レガシー機器をつなげない!

 工場には、データが空を飛んだり(無線通信)、クラウドに格納されたりする(クラウドストレージ)時代以前に作られた機械、いわゆる「レガシー機器」も少なくないだろう。レガシー機器をIoTの「つなぐ」仕組みに組み入れるのはなかなか難しい。そもそも、今動いているラインや機器に何か手を加えて変更するのはリスクも伴う。こういった障壁が立ちはだかり、「このレガシー機器がつながらないから先に進まない」と足踏みしているケースも少なくない。

 ならば思い切って機械ごと入れ替えるという選択肢もあるかもしれないが、その機械を使う前提で培った技術も捨ててしまうべきかどうかは難しい判断でもある。レガシー機器とはいえ、その機械でなければできないこともあるだろうし、その機械ゆえに他にはない価値を生み出している、という可能性もある。

「つなげる」と「データを集める」は別のはなし

 そもそもなぜレガシー機器をつなぎたいのかと考えると、おそらくデータを集めたいからだろう。ならば、計器類を「つなげる」ことと、「データを集める」ことを切り離して考えてもいいのではないだろうか。

 例えば、計器に表示されている数値をカメラで撮影し、それを画像処理によって数値化することも可能だろう。スマートではないかもしれないが、少なくとも人が見て記録する必要はなくなるし、早くデータを集め始めることができる。

 なぜ、今どきこんな泥臭い方法を勧めるのか。1つはレガシー機器を、データを取れるように改造してつなぐようなことを考えていると、目的に達するまでに相当な時間と費用がかかってしまうからだ。

 もう1つは、データを集めた結果、より良い作業フローに変更するという可能性もあるということだ。新たなフローが最適なものであると確認できてから、レガシー機器をいかにIoTでつなぐかということを考えても遅くはない。

古典的な手法もアリ

 実は製造現場で働いている人たちは、例えば手作業の組立ラインを撮影して改善に生かす、といったことを既に行っているケースが多い。写真や動画から情報を得ることは得意なはずなので、データを集める手段としても同様に利用すればいいだけ。繰り返しになるが、つながることとデータを集めることを混同しない方がよい。

 言い換えるならば、レガシー機器に対しては、古典的な手法でもいいということだ。インターネットを通さなくても、無線で飛ばなくても、クラウドに上げられなくても、データを集める方法はある。前述したPoCや小さなPDCAの発想と同じように、まずは早く実現できる手段でデータを集めて、それが本当に欲しいデータなのかどうかを早く確認する。そういう柔軟な発想をお勧めしたい。

 製造現場におけるレガシー機器からのデータ収集の方法、あるいは製造現場でなくてもインターネットにつながらない機器のデータの扱いについて悩んでいる方は、泥臭い方法で考え直してみてはいかがだろうか。


 次回は「IoT活用のための視点(4)『データ活用』」をお届けします。(次回へ続く)

執筆/監修者 プロフィール

監修・資料提供:

岡島康憲(おかじま やすのり)/DMM.make AKIBA エヴァンジェリスト

2006年、電気通信大学大学院修了後、NECビッグローブ株式会社(現:ビッグローブ株式会社)にて動画配信サービスの企画運営を担当。2011年にハードウェア製造販売を行う岩淵技術商事株式会社を創業。自社製品開発以外にも、企業向けにハードウェアプロトタイピングやハードウェア商品企画の支援を行う。2014年、ハードウェアスタートアップアクセラレータ「ABBALab」の立ち上げやハードウェアスタートアップ向けのシェアファクトリー「DMM.make AKIBA」の企画運営を担当。2017年、センサーデバイスにより収集した情報の可視化プラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業。マーケティングを中心とした業務を担当。

日野 圭(ひの けい)/DMM.make AKIBA テックスタッフ

DMM.make AKIBAのテックスタッフとして、施設運営および電気系・クラウド技術が関わる受託開発を担当。 大阪市立大学大学院修了後、日本電気株式会社にてコンピュータ回路設計とFW設計を経て、ワークステーションのOEM開発PMを担当。要件検討から保守まで、複数の企業とのハードウェアビジネスを経験。 その後、ビッグローブ株式会社にてWebインフラおよびDBを担当。2016年より現職。DMM.make AKIBA 企業向けIoT人材育成研修の講師を務める。

監修者関連リンク:

執筆・構成:杉本恭子(すぎもと きょうこ)/フリーライター



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