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“より良い設計”のために設計者自身が行うべき解析とCAE技術の最新トレンド超速解説 設計者CAE(2/2 ページ)

設計品質を追求する上で今や避けては通れない解析。「設計者CAE」の重要性が叫ばれて久しいが、設計者自身が行うべき解析は何も構造解析や固有値解析、流体解析だけではない。これら以外にも公差解析やトポロジー最適化も設計者が実施すべきものである。本稿では“設計者が行うべき解析”をテーマに、CAE技術の最新トレンドを交えながらそのポイントを解説する。

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設計者が実施すべき解析2:公差解析

 最近、筆者が重要性をひしひしと感じているのが、公差解析です。ほとんどの設計者が簡単な公差計算であれば、「Excel」などを使用して実施しています。ただ、公差解析の専門家がこれらの公差計算を見ていくと、かなりの頻度で計算方法が間違っているそうです。また、設計者の方々とお話する際に「公差をどのように決めているか?」と聞いてみると、「以前の図面からコピーする」という答えが多くあります。この公差の世界も、構造解析と同じように(もしくはそれ以上に)、「勘と度胸」の世界が広がっているように見えます。

 以前は、工場の怖いおっちゃんから教えてもらえた公差の考え方も、今はそのような状況がなくなっています。これまでは、経験に裏打ちされた「勘と度胸」でしたが、経験も勘もなく「度胸」だけで公差を決めているとすると、非常に怖い思いがします。もちろん、そのようなことはないと思いますが、少なくとも勘ではなく、しっかりと数値化し、説得力を持つ公差設計をすべきです。そうすることで、設計者自信が理解し、より良い公差設計を行うことができ、製品品質を高めることが可能となります。

 設計者が公差解析を行う上で重要なのは、構造解析と同じく教育です。やはり、ソフトの使い方ではなく、公差解析の考え方、または幾何公差の意味や考え方を理解することで、公差解析を進めることができると考えます。公差解析を実施する人が設計者でなくてはならないということはありませんが、公差を設定するのは設計者であるべきだと考えます。ただし、3Dモデル上に、規格に完全に準拠した幾何公差を作成するのは、かなり大変な作業です。

 最近では、この作業を軽減する機能も出てきています。著名な公差解析ツールである「CETOL 6σ」を提供しているSigmetixは、Creo Parametric上で動く幾何公差作成支援ツール「GD&T Advisor」を提供しています。このツールを使うことで、完全に規格と合致した幾何公差を作成できるだけでなく、そのまま公差解析に使用できるように、幾何公差が参照しているジオメトリも正しく設定しています。

図4 「Creo Parametric」上で動く幾何公差作成支援ツール「GD&T Advisor」
図4 「Creo Parametric」上で動く幾何公差作成支援ツール「GD&T Advisor」 (画像提供:PTCジャパン)

 人間が幾何公差を作成する場合、間違って平面度をエッジに付けてしまう可能性があります。矢印の向きによって、どの平面のことをいっているのか、人間が理解できたとしても、自動で読みこむソフトは理解できません。特にこのGD&T AdvisorからCETOL 6σとの連携は、同じ会社が開発しているだけあり、何の問題もなく設定した幾何公差を使用できます。

図5 「GD&T Advisor」と「CETOL 6σ」の連携イメージ
図5 「GD&T Advisor」と「CETOL 6σ」の連携イメージ (画像提供:PTCジャパン)

設計者が実施すべき解析3:トポロジー最適化

 最後に、トポロジー最適化です。トポロジー最適化は、比較的前からある技術ですが、3Dプリンタが広く世の中に出てきたことで、近年急速に注目を集めたように思います。多くのCADベンダーが搭載しており、特にAutodeskでは「ジェネレーティブデザイン」と呼び、膨大な数の形状パターンを検討し、その中から最適なものを探し出すといった機能を進化させています。当然、トポロジー最適化は、設計者が実施しなくてはならない解析の1つでしょう。

 「トポロジー最適化は、3Dプリンタを前提としたもの」というイメージを持たれている方もいるかと思います。実は、多くのトポロジー最適化には、従来の加工法でも製造できるように、さまざまな拘束条件を付けることができます。例えば、「対称形状にする」「ある一定方向のみの変化を許す」などです。とはいえ、製造条件にこだわり過ぎると画期的な形状ができない場合もありますので、どこまで拘束条件を付けるかは要検討です。

 トポロジー最適化を行う上で1つ気掛かりなのは、結果ジオメトリの問題です。ほとんどのトポロジー最適化では、最適化した結果のジオメトリとして、ポリゴン形状が作成されます。さすがに、ポリゴン形状をそのまま設計モデルに組み込むことは困難ですし、図面作成を行うことができません。そのため、結果ジオメトリを見ながら形状を再作成する必要があります。

図6 トポロジー最適化のイメージ
図6 トポロジー最適化のイメージ (画像提供:PTCジャパン)

 また、ポリゴン形状を比較的簡単に、滑らかな面に置き換える専用機能を搭載したものも登場しています。Creo Parametricのトポロジー最適化では、ほぼ自動的に結果のポリゴン形状から、滑らかでそのまま設計モデルとして使用可能なモデルを作成してくれる機能が搭載されています。トポロジー最適化で拘束条件を付け、最適化領域から除外した部分などは、平面として使用し、寸法なども付けることができます。特にトポロジー最適化は、多くの設計者から注目を集めるようになり、実際に活用している例が多く出てきています。そのため、今後もさらなる機能改善が期待できます。

⇒関連記事:PTCはなぜ設計プロセスにおけるシミュレーション技術の活用に注力するのか

現在の設計者はやるべきことが多く、失敗が許されない……

 ここまで書いてつくづく思うことがあります。それは“現在の設計者は、勉強すべきことが多岐にわたり、作業するタスクの数も非常に多い”ということです。

 昔の設計者は、ベテラン設計者が横におり、工場の現場が近くにあり、今のように時間に関係なくメールが入ってくる状況ではなく、さまざまな失敗をしながら経験を積むことができました。

 残念ながら、現在は強く設計の効率化を求められ、働き方改革を迫られる状況で、失敗することが許されません。そのような状況の中、設計者自身が設計品質を高めていくためには、「バーチャルで失敗を繰り返すこと」が重要だと筆者は考えます。

 バーチャルの世界であれば、何回失敗しても誰も文句を言わないどころか、実際の世界より何十倍も多く、素早く、失敗することができます。「設計者CAE」という言葉ができたころと比べると、ソフトやマシンの機能も格段に上がっています。ぜひ、さまざまは失敗をバーチャルで繰り返し、その経験を現代の設計に生かして頂ければと思います。


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