町工場コミュニティーの結合による新しいメーカーの形を考えてみる:【週刊】ママさん設計者「3D&IT活用の現実と理想」
まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年9月のサブテーマは『3D化とIT化は本当に後継者育成の鍵になるのか」を考える』です。
まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年9月のサブテーマは『3D化とIT化は本当に後継者育成の鍵になるのか」を考える』です。
SCENE 3:町工場コミュニティーの結合による新しいメーカーの形を考えてみる
協業には大きく分けて2つの形があります。まず、1つの仕事を効率よく片付けるために人手を集めて行う単純な協業。もう1つは、各社がそれぞれの得意技術を出し合って、製品の共同開発と生産を行う協業です。ここで焦点を当てているのはもちろん後者です(【事例】製造業ご当地お土産プロジェクト(完全地産)。
SCENE2でお話した「町工場コミュニティー」は、仕事を分担したりアウトソースし合ったりといった従来の関係から一歩進んだ、将来のための協業と人材育成のためのコミュニティーです。つまり、「自分のためではなく社会のため」を是とした集まりです。
町工場コミュニティーはインターネットを使って構成されるので、「○○県の○○市に存在するコミュニティー」という概念とはちょっと違って、地域を越えたつながりを持つことができる集団です。これが複数できて縦横無尽に結合できれば、より大きなコミュニティーになります。これが、「町工場コミュニティーのネットワーク」になります。
例外なく、ネットワークというのは拡大するほど統制が難しくなっていくものなので、ただつながればいいのではなく、コミュニティーの結合以前に、個々のコミュニティーが目的を明示してルールを作って運営されていることが重要ですね。
部品加工業というのは、その土地の主要生産品目による地域色があって、自動車や工作機械用の大型部品の加工業が集まる地域、鋳物業やダイカスト業が集まる地域、小型で精密な部品を大量生産する加工業が集まる地域といった具合に、地域が違うと得意分野が変わり、同じ設備を使っているのに世界が違って見えて、気付きを得ることがあります。これが、居住地域以外の同業他社との連携をおすすめする理由の1つでもあります(【参考資料】工業統計調査 平成29年確報 地域別統計表(経済産業省))。
町工場コミュニティーでの協業が軌道に乗ると、地域色を打ち出したご当地製品から、地域を越えたコラボ製品に至るまで、企画から製品化までをコミュニティーで一気通貫できます。そして、他の町工場コミュニティーとの結合によってカバーできる生産品目が増えていくと、これまで縁のなかった分野でも自社の得意技術を生かせる可能性があります。やがてコミュニティーの力で大手メーカーに引けを取らない製品を生み出すことができるでしょうし、大手メーカーと対等の立場で協業することも夢ではありません。
長い間加工業に専念してきた個々の町工場が、他社とつながったコミュニティーで共同開発したり製品を生産して商売にするなんて、確かに「あー、できたらいいよねぇ」のおとぎ話なのかもしれませんし、実際に「加工はできるけれど開発なんかムリ」「そんなに語るならお前がやれよ」という反応は日々受けます。ですが、本当に存続を考えた時、これからは他人の手を借りなければ難しいのは事実なのです。
他社と共同でモノを作るにしろ後継者を育てるにしろ、ノリと勢いだけで人を集めて決起しても、道のりはちっとも楽ではありません。はじめの一歩は「筋が通ったビジョン作り」です。それを実行するためのツールがITであり3Dであり、プラットフォームが町工場コミュニティーであるということです。そこをふまえつつ、価値観と目的を共有してベクトルをそろえて行動できる、強いコミュニティーを築きたいですね。
次回は『未来人が語った、「AIやロボットとともに働くボクの加工現場』をお届けします。「ある日、自らを『未来人』と名乗る若者と接触する機会がありました(真顔)」(次回へ続く)
Profile
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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