VRの歴史は意外と長く、学生たちは失禁やもちもち感を再現する:VRニュース(3/3 ページ)
デルは2018年7月24日、都内で「VR研究会 第1回会合」を実施した。「VR研究会」は同社が2018年3月に設立した産業向けVRの普及を推進するための組織である。今回の特別講演には奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 サイバネティクス・リアリティ工学研究室 教授 清川清氏が登壇。
生きがいある社会を作る「夢ロードマップ」と「超人スポーツ」
VRSJの研究者らが集まって2013年10月に作成した「VR技術・夢ロードマップ」では、VR技術により人と人との連帯感を強め、生きがいある社会の創成を目指している。それに基づいて様々な技術を研究開発していこうとするものだ。このロードマップは2013〜2040年を想定し、「社会基盤・応用展開」と「要素技術」の2つに分類し、時間軸中盤で2020年の東京五輪での応用というラインを設けて、多岐にわたるキーワードを詰めている。
「すぐには実現しないかもしれないけれど、10〜30年後に思い描くことができる社会をまとめている。ロードマップ(以下の図)は、抽象度と密度が高く、キーワードが多い」(清川氏)。
ロードマップの趣旨をまとめるなら、清川氏は「将来、少子高齢化、労働力定価、都市部の核家族化、地方の過疎化といった問題により、人と人と連帯が薄れる社会になることが懸念される。VR技術でこれらの問題を緩和・解決し、生きがいある社会を作ろうということ」と説明する。例えば「ハンディキャップのある人や病気になってしまった人が再び社会参加できるようにする」(清川氏)ことを実現する。つまりVR技術を用いて、時間や距離、個人の能力を制約としない、裾野の広い社会参加できる体制を作ることだ。
VRSJは夢ロードマップに呼応し、さまざまな活動をしている。そのうちの1つである「超人スポーツ」は、最新技術でスポーツを再発明しようという分野だ。「例えば、ハンディキャップがある人でも、健常者並みの能力を発揮して競技にチャレンジできるようにする」(清川氏)。オリンピックとパラリンピックが同じフィールドで競える、人間強化技術開発を志す。
日本のVRビジネス活用を促進するために
清川氏は、日本のVRビジネスの成長率が世界に比べて低いことを各調査機関などが指摘していると説明した。同氏は「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備報告書(監修:VR/AR検討委員会)」に基づき、国内におけるVR普及への課題について、以下のように整理した。
- ハードウェアの課題:HMDなどのハードウェアのスペックや簡便性が不十分。解像度、視野角、遅延、重量、デザインなど
- コンテンツの課題:コンテンツの量や品質の不足、エンタメ以外のビジネス領域での活用不足
- プラットフォームの課題:規格・仕様の不統一による機会損失、対応コスト増
- 業界としての課題:短絡的マネタイズでの苦戦、VR業界のコミュニティー形成不足。VR専門企業の不足。VR人材の継続雇用が困難であることなどの悪循環
- VR HMDなどの健康への影響:VR酔い対策、基準や検証機関の不在、学術機関による公式見解のない年齢制限など
「日本の市場は、ポテンシャルは高いが、余裕がない、活用法が分からないといったことが理由の“様子見”層が多数いるといわれている」(清川氏)。“様子見”層を突き動かす原動力になるべく、VRSJとしては、学会関係者の横連携により、下記の取り組みを行う。
ハードウェアの課題に対しては、ニーズの吸い上げやスペックの提言、ロードマップ提唱などを行っていく。コンテンツの課題については、ノウハウの共有や、ソリューション提供、トレーニングなどの導入サポートに取り組む。プラットフォームについては、推奨プラットフォームの規格化、認証、ハードウェア貸し出しなどのサポートを実施する。業界としての課題には、成功事例の共有、セミナー・ハッカソンなどの開催、学術イベントの後援などを行う。
今後、VRSJは「学」(アカデミア)を担い、情報共有の場の提供や専門知識の創出・整理などを実施、VR研究会は「産」(ビジネス)を担い、それを用いてビジネスチャンスを創出したり短期の解決力を共有したりといったことに取り組み、相互が連携していくということだ。
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