世代交代を図る樹脂加工メーカー、採用続けてきた若手が中核戦力に:頑張る中小製造業の実像(1/2 ページ)
愛知県北名古屋市に本拠を置く樹脂加工メーカーのサン樹脂は、2代目社長のもとで、リーマンショックのさなかでも新卒採用を続けるなど世代交代を図っている。
1.会社概要
愛知県北名古屋市に本拠を置くサン樹脂株式会社(以下、サン樹脂)は、1978年(昭和53年)に磯村嘉孝氏が個人創業して以来、約40年間一貫して樹脂加工を専門に行っています。2009年に2代目社長の磯村太郎氏に世代交代を図り、事業拡大を進めています。
2.サン樹脂のこだわり
サン樹脂は「樹脂ならどんな素材も正確な形状に仕上げます」を売りにしています。そのため、次のこだわりを重視しています。
- 金型の初期投資は不要で切削加工により高精度な製品を1個から製作します
- 硬い素材から柔らかいものまで、どんな素材も削ります。そのため、ダイヤモンドなどの特殊な刃物を使用しています
- 刃物や治具は自作することで、ワンランク上の仕上がり面や寸法精度にこだわります
- 25℃の温度に管理された環境で安定した切削・検査をして良品条件を確保します
3.世代交代の背景
2代目社長の磯村太郎氏(以下、太郎氏)は50歳。20年前の入社直後から、会社全体の世代交代を図ってきました。しかし、中途採用だけでは社員の年代がバラつくことから、新卒採用に踏み切りました。
その当時はちょうどリーマンショックが起こった直後で、仕事量が激減しましたが、既存社員には一切リストラはしないと宣言し、社内改善活動に集中しました。太郎氏は夫婦ともに力を合わせ、若手社員を少しずつ採用し地道に育成していきました。現在の従業員数は38人です。
4.約10年の軌跡
太郎氏のモットーは「できないは言わない」です。約10年の間に採用した若手社員には自ら常に笑顔を絶やさず明るい姿勢でともに取り組む姿勢を背中で見せた結果、今は20〜30代の社員が一番多くなり、中核戦力として機能し始めました。
会社に訪れると、まず驚くことが3つあります。
- 最新オフィスのようなデザイン性の高い工場
- とにかく明るく活気のある社員
- 社員の働きやすさを重視した手厚い福利厚生
2017年に新設した建屋は製造業とはとても思えない、近代的なオフィス空間になっています。間接照明を採用し、吹き抜けや木を基調としたフロアは自然に癒されます。
工場も隣接しているのですぐに移動できますし、空調も26℃前後に設定して快適に作業ができるようにしています。実は、空調は地熱と井戸水という自然エネルギーを利用したもので、断熱性の高い建物と相まって快適ながら省エネルギーを実現しています。
次に、会社を訪れた際に社員の方が必ず笑顔で大きな声であいさつをします。今回の取材の際に少し早く訪れたこともあり、入口で待っていますというと、若手社員の方が中に通してくれるだけでなく、現場の案内までしてくれました。とてもホスピタリティの高い会社だと感じます。そして、若手社員が多いだけでなく、女性比率も約4割と高いです。本当にここは製造業なのかと錯覚してしまいます。
食堂も木目調の机と椅子で快適ですし、ドリンクも全て無料。社員旅行やイベントも社員の意見を尊重しており、ビアガーデンや海外研修旅行に行きます。社長夫妻が社員と対等に話す姿勢が自然に浸透しているため参加率も高いのだとか。太郎氏が、アロハシャツに麦わら帽といったオープンな姿勢で社員と酒を飲みながら何時間も語り合う文化も素晴らしいのではないでしょうか。
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