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メイカーズから始まるイノベーション、ポイントは「やるかやらないか」イノベーションのレシピ(1/2 ページ)

メイカーズの祭典である「Maker Faire Tokyo 2018」(2018年8月4〜5日、東京ビッグサイト)では、パソナキャリアの企画によるセミナー「メイカーズから始まるイノベーション」が開催された。

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 メイカーズの祭典である「Maker Faire Tokyo 2018」(2018年8月4〜5日、東京ビッグサイト)で、パソナキャリアの企画によるセミナー「メイカーズから始まるイノベーション」が開催された。慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任教授で、JudgePlus 代表である広瀬毅氏、ベンチャー企業であるエレファンテックの代表取締役社長 清水信哉氏、新たな企業を支える立場である大手半導体商社のマクニカ Mpression推進部 部長の米内慶太氏が、それぞれに「メイカーズ」と「イノベーション」の在り方について語った。

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セミナー「メイカーズから始まるイノベーション」の様子(クリックで拡大)

新たなアイデアは基本的に既存要素の組み合わせ

 セミナーでは、まず広瀬氏が第1部として「イノベーションとは何か」という考え方を示した。広瀬氏が特任助教を務める慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科は、ある意味でイノベーションを意図的に起こすことを目指し、研究を進めているところである。

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慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任教授で、JudgePlus 代表である広瀬毅氏

 広瀬氏は「われわれは『イノベーション』と『イノベーティブ』を使い分けている。『イノベーション』は『機会を新しいアイデアに転換し、それを広く普及させる』ことを意味する。つまり、新しいものを生み出して、それを普及させ、結果として世の中が大きく変わった状態が『イノベーションが起こった状態』ということになる。『イノベーティブである』ということはその普及前の段階を示す。われわれは『イノベーティブなアイデア』を意図的にたくさん生み出すということをミッションとしている」と「イノベーション」と「イノベーティブ」の違いについて語る。

 こうした中で慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科が目指しているのが「イノベーティブ思考」である。これは「システム思考とデザイン思考の掛け算でできる」と広瀬氏は指摘する。

 システム思考はあらゆる物事をシステムとして捉える考え方である。システムとして捉えるために、改善方法や介入方法などを考えることができ、さらに再現性なども確保できる。一方のデザイン思考は、デザイン創出時のデザイナーの考え方で、最終的なユーザーの使い勝手などから逆算して最適な形や機能などを考えていく思考方法だ※)。これらを組み合わせることで、例えば、デザイン思考により導き出された隠れたニーズを満たす機能などを、システムとして構築することなどが可能となる。こうした考え方がイノベーションを生み出しやすくすると広瀬氏はいうのだ。

※)関連記事:イノベーションを生み出す「デザイン思考」とは

先進技術がイノベーションを生むわけではない

 さらに広瀬氏が注意すべきポイントとして挙げるのが「イノベーションは組み合わせである」ということである。「イノベーションというと、ゼロから全く新しい何かを生み出すようなイメージを持つ人が多いが、基本的には新しいアイデアというのは既存の要素の組み合わせである。これらを従来とは違う形で組み合わせることが新しいアイデアにつながる。このつなぎ合わせる要素が本来遠い位置にあればあるほどユニークなアイデアにつながりやすい」と広瀬氏はイノベーションの考え方について述べる。

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「HELP, I WANT TO SAVE A LIFE」の商品キット(クリックで拡大)出典:グラハム・ダグラス氏のWebサイト

 その例として挙げたのが、「HELP, I WANT TO SAVE A LIFE」という商品キットである。これは米国のグラハム・ダグラス(Graham Douglas)氏が考えたもので、Help Remediesと協力して実現した製品である。それはばんそうこうのケースの中に、綿棒と骨髄移植ドナー登録センターに向けた返信用封筒を入れたというものだ。これにより骨髄ドナー登録者が大幅に伸びた他、商品キットの売上高も伸びたという。

 広瀬氏は「ここで重要なのは、この『HELP, I WANT TO SAVE A LIFE』はまさにイノベーティブな製品だったわけだが、1つも新しい先進的な技術を使っているわけではないということだ。ばんそうこうも、郵便も、全てが成熟し、枯れた技術だといえる。しかし、これらを組み合わせたものは、革新的だった。イノベーションを起こすにはこういう発想が必要になるのだ。日本ではどうしても技術開発の延長線上にあるのがイノベーションだと捉えられがちだが、決してそれだけではない」と強調する。

 さらにこの「組み合わせる」ことを想定したイノベーションに取り組む中でも「組み合わせる過去の製品やサービスの中で、イノベーティブな要素を抜き出して、他の要素と組み合わせることが、より革新的なものにつながる。例えば、ソニーのウォークマンは究極的には『音楽を外に持ち出せた』という点が革新的だった。この『持ち出す』を他のものと組み合わせることで新しい価値が生まれるかもしれない。そういう発想で考えていくのだ」と広瀬氏は述べている。

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