ロボット五輪あらためロボットサミットが始まる、2018年プレ大会は賞金1億円超:World Robot Summit徹底解剖(1)(1/3 ページ)
東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年、新しいロボットイベント「World Robot Summit(WRS)」が開催される。本連載では、このWRSについて、関係者へのインタビューなどを通し、全体像を明らかにしていく。第1回はWRSの概要や狙いについて説明する。
東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年、日本で新しいロボットイベントが開催されることをご存じだろうか。「World Robot Summit(以下、WRS)」と名付けられたこの新イベントは、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催。2015年末に実行委員会と諮問会議が発足し、これまで、開催に向けた具体的な検討が進められてきた。
WRSは一体、どんなイベントになるのか。初の開催となるだけに、まだイメージがつかみにくいところだが、関係者へのインタビューなどを通し、全体像を明らかにしていこうというのが本稿の趣旨。これから4回(予定)の短期連載の形で、詳しくお伝えしていきたいと思う。
まずは1回目として、WRSの概要や狙いなどから入っていこう。今回は、実行委員会の中で議論をリードしてきた委員長の佐藤知正氏(東京大学 名誉教授)、委員の安田篤氏(経済産業省 製造産業局 産業機械課 ロボット政策室 室長)と弓取修二氏(NEDO ロボット・AI部 部長)に話を聞いた。
World Robot Summitはどんなイベントになる?
WRSの2本柱は、競技会の「World Robot Challenge」と展示会の「World Robot Expo」である。競技会は、「ものづくり」「サービス」「インフラ・災害対応」「ジュニア」という4つのカテゴリーで、9種目(チャレンジ)が行われる。各競技の詳細については、連載の2回目以降でお伝えする予定だが、概要は以下の通りとなる。
ものづくり(1種目)
産業用ロボットを想定したカテゴリーで、競技としては「製品組立チャレンジ」が行われる。従来の産業用ロボットは基本的に大量生産向けであるが、このチャレンジでは、究極的には一品物の生産にも対応することを目指す。
サービス(3種目)
家庭内での作業支援を想定した「パートナーロボットチャレンジ」と、コンビニの業務自動化を想定した「フューチャーコンビニエンスストアチャレンジ」がある。パートナーロボットチャレンジはさらに、実機によるリアルスペースリーグと、シミュレーター内で行われるバーチャルスペースリーグに分かれる。
インフラ・災害対応(3種目)
レスキューロボットのカテゴリー。プラントの日常点検や災害対応がテーマの「プラント災害予防チャレンジ」と、トンネル災害での人命救助がテーマの「トンネル事故災害対応・復旧チャレンジ」がある。さらに、レスキューロボットの性能を評価する手法を開発する「災害対応標準性能評価チャレンジ」も用意される。
ジュニア(2種目)
若い世代の育成を目的としたカテゴリーで、参加できるのは19歳以下の学生などに限られる。学校をテーマにした「スクールロボットチャレンジ」と、家庭をテーマにした「ホームロボットチャレンジ」がある。
展示会
展示会は、競技会と同じ場所で開催されるので、競技の合間に展示を見るなど、来場者は1日中ロボットを満喫できるだろう。参加型、体験型のサイドイベントも用意されるので、一般の人も楽しめるイベントになりそうだ。「展示会では最新のロボット技術を紹介し、競技会では未来の可能性を示す」(安田氏)というのがコンセプトだという。
狙いはロボットの社会実装と研究開発の加速
WRSは、2015年2月に策定された「ロボット新戦略」において、「ロボットオリンピック(仮称)」として盛り込まれ、実施が決まったもの。開催の目的は、ロボットの社会実装と研究開発を加速させることだ。
これまでのロボット競技会は、研究開発や人材育成に有効なツールとして活用されてきたが、WRSはそれに加え、社会実装を強く意識している点が特徴といえるかもしれない。その背景にあるのは、世界でも類を見ないほどのペースで少子高齢化が進み、深刻な人手不足が予測されていることに対する危機感だ。
WRSの競技として、ものづくり、サービス、インフラ・災害対応の3分野が選ばれたのは、「人手不足に対応するため、生産性の向上が求められている分野だから」(安田氏)だ。「WRSは社会実装型の競技になる。ロボットがアプリケーションとして、経済活動や産業活動や日常生活に貢献するようなタスクを設定した」(同氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.