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“生みの親”が語るインダストリー4.0の本質とこれから製造業IoT(2/3 ページ)

SAPジャパンは年次カンファレンス「SAP NOW」を開催し、基調講演プログラムの1つとして、ドイツの「インダストリー4.0」の提唱者でドイツ工業アカデミー評議会議長のヘニング・カガーマン氏が登壇。「インダストリー4.0とソサエティー5.0を推進するエンタープライズIT」をテーマにデジタル化がもたらす産業や経済の変化について訴えた。

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インダストリー4.0にはサイバーとフィジカル両面が重要

 「インダストリー4.0」は、第4次産業革命を意味するとされている。第1次産業革命は18世紀から19世紀に生まれた蒸気機関による産業の変化で、第2次産業革命は電気によるもの、第3次産業革命はコンピュータの登場によるものだとされている。これらに対し、第4次産業革命は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの技術進化を中核としつつも、変革のカギとなるのは「データ」だとされている。

 「インダストリー4.0で最も重要なのは『データ』であり、コンピュータとつなげるというだけではインダストリー3.0のレベルである。最低でもデータ化により、可視性が達成できる形でなければインダストリー4.0とはいえない。『インダストリー4.0はできている』という企業もあるが、ほとんどがまだできていないのが現状だ」とカガーマン氏は現状について語る。

 可視化の後は、分析などにより、起きている事象の理解へと進み、デジタルツインやシミュレーションの活用により今後起きることの予測へと進む。そして自律化へと進む流れだ。「自律化を実現するにはインテリジェンスだけでは難しい。サイバー空間における分析能力や予測だけでは、自律化はできない。物理世界に持ってこないと駄目だ。デジタル化だけを考えていては自律化はできない」とカガーマン氏はデジタルと物理世界の融合の価値を訴える。

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第4次産業革命への指針(クリックで拡大)出典:acatech

インダストリー4.0の価値を生むビジネスモデルの重要性

 このようなインダストリー4.0による自律化を企業としての収益に結び付けるにはビジネスモデルの開発が重要になる。「リアルタイムのデータ収集や分析などを生かし、どのような価値を生み出していくのか。価値のある洞察をどうやって得るのかを考える必要がある。その際にはデジタルツールが必須となり、デジタルテクノロジープラットフォームをどう構築するのかを考えなければならない。1つ1つを個別で構築するのではなく、統合されたツールセットが必要になる」(カガーマン氏)。

 さらに「本当に新たなビジネスモデルを構築するためにはパートナーが必要になる」とカガーマン氏は強調する。インダストリー4.0で必要とされる技術群は幅広く、1社で全てをカバーできる企業は存在しない。「得意なものを持ち寄り、エコシステムとしてのパートナー連携が必要だ」(カガーマン氏)。

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デジタルエコノミーのビジネスモデル(クリックで拡大)出典:acatech

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