米国医療界がグーグルやアップルと連携を深める理由は「相互運用性の標準化」:海外医療技術トレンド(37)(1/2 ページ)
モバイルヘルスやデジタルヘルス機器の普及に積極的な米国の医療界では、グローバルプラットフォーマーとの連携強化が本格化している。その背景には「相互運用性の標準化」がある。
本連載第21回で取り上げたように、モバイルヘルスやデジタルヘルス機器の普及に積極的な米国の医療界では、グローバルプラットフォーマーとの連携強化が本格化している。
モバイルヘルスの相互運用性で連携する米国医師会とグーグル
2018年4月9日、米国医師会(AMA)は、グーグル(Google)と共同で、「ヘルスケア・インターオペラビリティ・アンド・イノベーション・チャレンジ」を実施することを発表した(関連情報)。
米国医師会は、医療施設やテクノロジーベンダーの枠を超えて、保健医療データを整理/共有するための共通データモデルを構築することを目的とする「統合保健医療モデルイニシャティブ(IHMI)」を推進してきた(関連情報)。この取り組みをモバイルヘルス技術に拡張させ、患者と医師の間の医療データのモニタリング/共有を効率化して、慢性疾患管理の向上を図ろうというのが、今回のプロジェクトの趣旨である。
米国医師会は、専用のオープンイノベーションWebサイト(図1参照、関連情報)を公開して、ソリューションのアイデアを募集した。
図1 米国医師会「ヘルスケア・インターオペラビリティ・アンド・イノベーション・チャレンジ」 出典:AMA「AMA Health Care Interoperability and Innovation Challenge」(2018年7月7日)
コンテストの主な評価基準は以下の通りである。
- 問題提示の順守:提案は、問題の提示に対し、どの程度順守/取り組んでいるか
- 相互運用性:ソリューションは、相互運用性とイノベーションを促進しているか
- 実用性:プレゼンターは解決する問題を明確に提示しているか、そのアイデアはどのようにして問題を解決し、どのようにしてその働きを評価するのか。そのアイデアは、今日の臨床環境に、手頃な費用で、現実的に導入できるのか
- 効果:本当の便益(費用削減、アウトカムの改善、よりよい患者の経験など)を生み出すアイデアを求めている。提案されたアイデアが導入されたら、どのようにして有益になるのか
そして2018年6月28日、以下の8つのチームが、ファイナリストに選ばれてプレゼンテーションを行った(関連情報)。
- 患者にコントロールされたインテリジェント保健医療情報連携(PaCI-HIE)
- I-deal Health:患者に自分自身の成功を可視化する力を付与する
- 循環器疾患の包括的モニタリングのためのBluetoothデバイス
- Carium:個別化医療の相互運用性と駆動するイノベーションの強化
- 高血圧を予測できる患者のエンゲージメント(HYPPE)
- HealthSteps:患者のエンゲージメントの進化
- 日常的な臨床ワークフローを利用した外科患者の迅速なリスク評価:コミュニケーションとアウトカムを改善しながら、正確に実行リスクを評価する患者完了型脆弱性ツールの効用
- 保健、医療、フィットネスデバイスおよびサービスの遠隔モニタリング向けContinua医療グレードのデータ連携
その後6月29日、以下の3チームが入賞者に選ばれた(関連情報)。
- 第1位〜HealthSteps:患者のエンゲージメントの進化(関連情報)
- 第2位〜I-deal Health:患者に自分自身の成功を可視化する力を付与する(関連情報)
- 第3位〜FUTUREASSURE LLC:日常的な臨床ワークフローを利用した外科患者の迅速なリスク評価:コミュニケーションとアウ)トカムを改善しながら、正確に実行リスクを評価する患者完了型脆弱性ツールの効用(関連情報)
米国医師会とグーグルの共同プログラムを俯瞰すると、モバイルヘルスアプリケーションやデジタルヘルス機器から生成されるデータを、患者―医師間のインタフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)向上や臨床現場の業務プロセス改革に有効活用する中核機能として、相互運用性が位置付けられている点が興味深い。
またグーグルは、「Google Cloud」のWebサイト上で、「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)」の事業提携者(BA:Business Associates)として、クラウドサービス事業者に要求される提携事業者契約(BAA:Business Associate Agreements)の対応状況を公開する(関連情報)など、プラットフォームの臨床現場利用に不可欠なHIPAAの要求事項を順守する体制を構築し、具体的な管理策を提示している。
当然、グーグルのようなグローバルプラットフォーマーのサービスを利用して、モバイルヘルスやデジタルヘルス機器を提供する企業も、サービス品質維持のため、自社の責任範囲の部分について、プラットフォーマーと同等レベルのセキュリティ/プライバシー要求事項を順守する必要がある。
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