眠くなったら空調刺激で覚醒促す、ダイキンとNECがオフィスの生産性向上で新技術:研究開発の最前線(1/2 ページ)
ダイキン工業とNECは、2016年10月から取り組んでいる「知的生産性を高める空気・空間を実現するための共同研究」の成果を発表。オフィスなどの執務空間で眠くなった時に覚醒を促すために加える刺激として、空調による温度刺激が特に効果的で、眠気の兆しが見えた早期の段階で刺激を与えれば、覚醒した状態を保ちやすいことも分かった。
ダイキン工業とNECは2018年7月25日、川崎市内で会見を開き、2016年10月から取り組んでいる「知的生産性を高める空気・空間を実現するための共同研究」の成果を発表した。オフィスなどの執務空間で眠くなった時に、覚醒を促すために加える刺激として空調による温度刺激が特に効果的なことを確認した。眠気の兆しが見えた早期の段階で刺激を与えれば、覚醒した状態を保ちやすいことも明らかになったという。
NECは、共同研究の成果となる覚醒度を効率よく検知する技術を、今後2年以内をめどに実用化したい考え。ダイキン工業は、NECの覚醒度検知技術と組み合わせる新たな空調技術の開発検討も含めて数年内をめどに実用化を進める方針だ。
両社の共同研究では、ダイキン工業の空気/空間コントロール技術とNECのIoT(モノのインターネット)/AI(人工知能)という、それぞれの強みを生かした新たな技術の確立を目指している。ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター 主任技師の橋本哲氏は「生産性向上に向けて各企業で働き方改革が進められている。その中で、オフィス空間での作業効率向上や集中力維持が可能な技術が新しい価値になると考えた」と語る。
今回発表した成果は、1908年に心理学者のロバート・ヤーキーズ氏とJ.D.ドットソン氏が発見した、覚醒レベルとパフォーマンスの間には逆U字型の相関関係が成立するという「Yerkes-Dodsonの法則」に基づくもの。同法則によれば、知的生産性を高めるには眠気を抑えて「覚醒度」を適切に保つことが重要であり、覚醒度から作業効率を推定できるという。
そこで両社は、この覚醒度を適切に保つために、どのような方法やタイミングの刺激が良いかを確かめるため、定期的に被験者の覚醒度を計測しながら、空調制御による温度刺激、照明制御による照度刺激、覚醒効果のある市販アロマを用いた芳香刺激をそれぞれ用いて、覚醒度の変化を検証した。
覚醒度の計測についてはNECの顔認証技術がベースとなり、空調や照明、芳香による刺激を加えるための制御技術はダイキン工業が中心になって開発した。そして、これまで約100人を対象に実証実験を行ったところ、温度刺激が最も眠気を抑制し続ける効果があることが分かった。
5段階で分かれる覚醒度の変化については、温度刺激が最大2段階分上昇させるとともに、さらに45分以上眠気を抑制し続ける効果が得られた。これに対して、照明刺激と芳香刺激による覚醒度の変化は最大で0.5段階だったという(この結果は55人の実証実験結果の平均となる)。また、既に眠い状態から刺激を与えても眠気は抑えにくく、眠気の兆しを検出した時点で刺激を与える方がより覚醒効果が大きくなることも分かった。さらに、温度環境を変えないままだと発生しやすい覚醒度の低下(馴れ)を、定期的な空調による温度刺激によって防止できることも確認した。
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