「COMPUTEX TAIPEI 2018」の半分は組み込みからできている:COMPUTEX TAIPEI 2018レポート(前編)(1/3 ページ)
2018年6月5〜6月9日の5日間、「COMPUTEX TAIPEI 2018」が開催された。PCやモバイルの展示会として知られているが、組み込み関連の展示も多い。新たな展示企画「InnoVEX」も加えて紹介しよう。
2018年6月5〜6月9日の5日間、台湾・台北市内にあるTWTC(台北世界貿易中心)などを会場に「COMPUTEX TAIPEI 2018」が開催された。日本でも多くのメディアがレポートしているので、記事を目にされた方も多いと思う(一例としてITmediaの記事はこちら)。
これらの記事ではPCやモバイルなどが中心の取り上げ方をされており、実際展示の半分くらいはそんな感じなのだが、残りの半分はバリバリの組み込み(Embedded)であって、さらに2018年は3号館で「InnoVEX」という、産学協同やベンチャー企業を中心とした展示が行われており、なかなか興味深いものも多数見ることができた。そこで、COMPUTEX TAIPEIの残り半分である組み込みと新展示のInnoVEXから幾つかをレポートの形でご紹介したい。
台湾でZEH!?
ZEH(ゼッチ、と読む)は、スマートエネルギー関連や住宅業界関連、あるいは最近自宅(一軒家)の新築やリフォームをされた方ならご存じであろう。Zero Energy Houseの略で、基本はソーラーパネルを軸にした再生可能エネルギーで自宅の消費分を賄いつつ、発電だけでなく家庭内機器や住宅そのものの省エネ化も同時に行うことでエネルギー収支をプラスにしようという仕組みである。
経済産業省がこれを大きく後押ししており、補助金をはじめさまざまな施策を行っている。ただし、ZEHそのものは日本の中の仕組みで別に国際的にどうこうという話ではないと思っていたら、いきなりInnoVEXでこの看板を見てちょっと度肝を抜かれた(図1、2)。
この展示を行ったのは台湾のNextDrive。純然たる台湾のスタートアップ企業である。とはいえ2017年には日本法人も設立しており、ちゃんと日本語のWebサイトもある。2017年には「Cube J1」という、日本の電力会社10社のスマートメーターに対応したIoT(モノのインターネット)ゲートウェイを発売している。
ただ同社が今回の展示の軸に据えるのは、台湾(正確に言えば台湾電力公司)に対応したスマートメーターだ(図3)。説明員によれば、現在のところ台湾はまだスマートメーターはまるっきり普及しておらず、なのでまずはスマートメーターを台湾の家庭に入れるところから始めるのだ、という話であった。ただし通信プロトコルはWi-SUN+ECHONET Liteを採用しており、この結果として日本のさまざまなスマートメーター系アプリケーションがそのままorちょっとしたカスタマイズで利用できる、とのこと。ZEHについては、少なくとも直近のロードマップには入っていないが、将来的には台湾でもこうした仕組みが必要になると考えており、そうしたことを踏まえて今回はZEHを前面に押し出したらしい。あえて中国語ではなく日本語を前面に押し出したのも、日本で普及が始まっていることをアピールするためということらしい。
逆に、一度スマートメーターが家庭に入れば、その先ではいろいろな監視や制御(図4)、ホームセキュリティ関連製品(図5)、ヘルスケア製品などとの連携(図6)に加え、さまざまなサービス(図7、8)などが提供可能になる。将来的にはそれこそ太陽光発電などを加えてZEHを実現するだけでなく、その延長でスマートシティーも、というなかなか気宇壮大なイメージも示されていた(図9)。
台湾で日本のZEHがどう捉えられているのかが垣間見える、なかなか面白い展示であったとは思う。ただ台湾ではスマートメーターに関しては、2012年頃には同じ台湾のTATUNG(大同株式会社)が大口利用者向けを納入しており、また2016年頃にはITRI(財団法人工業技術研究院)が台湾電力と共同で家庭向けの普及を推進するという話があったと思うのだが、これと今回展示されたスマートメーターとの関連は不明である。ちなみに台湾電力は、2018年から20万世帯にスマートメーターをテスト設置する予定となっており、このあたりも含めてNextDriveの今後の動向がちょっと気になるところではある。
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