リチウム空気電池の開発にソフトバンクが参入「IoT最大の課題を解決する」:研究開発の最前線(2/3 ページ)
ソフトバンクと物質・材料研究機構(NIMS)は、リチウムイオン電池の5倍のエネルギー密度が期待されるリチウム空気電池の実用化を目指す「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」の設置に関する覚書を締結。同センターの活動により、NIMS単独の研究で2030年ごろとしていたリチウム空気電池の実用化時期を、2025年ごろに早めたい考えだ。
エネルギー密度はリチウムイオン電池の5倍も課題は多数
リチウム空気電池は、スマートフォンやノートPC、電気自動車などに現在広く利用されていはるリチウムイオン電池の次々世代に当たる「革新電池」とされている。
リチウムイオン電池は、正極活物質にコバルト酸リチウムなどの層状酸化物を、負極活物質に黒鉛などの炭素材料を用いて、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで電池としての機能を実現している。リチウム空気電池では、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することは変わらないものの、正極活物質として酸素(空気)を、負極活物質としてリチウム金属を用いることにより、リチウムイオン電池と比べて大幅なエネルギー密度を果たせる。電解液や集電体、セパレータ、ケースなどの重量を勘案した電池セルレベルのエネルギー密度では、現時点での想定でもリチウムイオン電池の5倍に達するという。
ただし、リチウム空気電池の実現に向けた課題は多い。充電時の過電圧が大きいためエネルギー効率が低く、電解液も分解してしまう。リチウム金属を用いる負極上で生成されるする針状結晶(デンドライト)の抑制も必要であり、高いエネルギー密度と充放電サイクル数を両立する高効率のスタックの設計も求められる。
NIMSは、課題の多いリチウム空気電池の研究開発では世界でも先進的な成果を出している。実用化に不可欠なスタック技術の開発は世界初であり、そのスタック技術を用いてリチウム空気電池セルを試作し世界最高となるエネルギー密度600Wh/kgを実証している。企業が関わる他の研究成果としては、サムスン電子(Samsung Electronics)の研究所が発表している程度で「NIMSが現状トップを走っている。今回のセンター開設により、研究開発を加速させ、実用化の段階までトップを走り続けたい」(橋本氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.