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品質保証体制を強化するためのIoT活用はどのように実践すべきか(その1)トヨタ生産方式で考えるIoT活用【実践編】(2)(2/3 ページ)

日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」の利点を生かしたIoT活用について、実践編として、より具体的な「導入のポイント」や「活用する手段」を説明する本連載。第2回は、品質保証体制強化におけるIoT活用のうち「収集」について解説します。

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トレーサビリティー、生産管理、予知保全の管理項目と収集方法

 品質保証強化のために、最初の工程から最後の工程までの品質に関わる情報収集をする仕掛けを作る際には、次の観点で情報収集を行うことが重要です。

 特に、IoT導入においてAI(人工知能)やエッジコンピューティングといった手段が先行して目的が不明確のままプロジェクトが進む話をよくお聴きします。IoT導入の目的は大きく「トレーサビリティー」「生産管理」「予知保全」の3つに層別されます。それらの目的を達成するために、次の手順で情報収集項目の洗い出しを行うのです。

  1. 目的に合わせて収集するデータ項目を洗い出す
  2. データ収集のサイクルを定義する
  3. 情報収集における7つのムダと2Sの考慮をする

収集項目の具体的な洗い出し手順

 ここでは情報収集項目の洗い出し方の手順について具体的に解説していきます。

1.目的に合わせて収集するデータ項目を洗い出す。

 現場から収集するデータと目的は、大きく次の3種類に層別されます。

  • トレーサビリティー:各工程で良品・不適合品の製造を証明する為のエビデンス情報を指します。個体やロット単位の製造条件や検査項目の結果データが対象
  • 生産管理:日々生産現場で安定した生産を行う管理に必要な情報を指します。アンドン情報(正常、異常、段替えなど)、生産管理指標算出のための製造原単位項目が対象
  • 予知保全:定期保全の時期を予報としてアナウンスしたり、故障発生の予兆を通知したりする情報を指します。動作時間、使用回数、異常検知項目が対象

 上記の目的に合わせて必要となる項目を洗い出します。

2.データ収集のサイクルを定義する。

 次に、それぞれの項目を収集するサイクル(収集周期)を定義します。データ収集の間隔は短ければ良いというのではありません。あくまで1.の目的を満たすために必要なデータ収集のサイクルを定義していかなければなりません。

  • トレーサビリティー:各工程のサイクルタイムの単位。例えば、60秒単位など。ただし、波形情報として収集が必要な場合は最低0.1秒単位の情報が求められる
  • 生産管理:アンドン情報はリアルタイムとなるが、0.1秒〜1秒単位での設定が一般的。生産管理指標算出に必要な製造原単位はサイクルタイムの単位〜時間単位
  • 予知保全:定期保全のための予報情報は数十秒〜数分単位。予兆管理としてのデータは最低0.1秒単位で収集が必要。

 上記のことから目的に応じて情報収集の粒度は大きく異なります。間違ってもやってはいけないのは、全て細かい単位でデータ収集をすることです。これを行うと使用しない膨大なデータ量を保管する必要が出てくるとともに、後からデータをサンプリングといった形で間引いたりするムダが生じます。

3.情報収集における7つのムダと2Sの考慮

 IoTで情報収集する際によくデータクレンジング(又はクリーニング)という言葉をよくお聴きします。

 これは精度の悪いデータを排除して精度の良いデータのみを扱うといった表現として使われています。筆者としては、これも大事ではあるものの、他にも大事なことがあると考えています。考慮すべきと思う点について次に説明します。

  • 情報収集における2S
    • 整理:不必要なものを取り除いたり混乱したものを整えたりする
    • 整頓:整理をした後で必要な物を正しい位置に置く

 上記の1.と2.では、目的ごとに必要な情報を洗い出し、目的のために必要な粒度で収集するサイクルを定義してきました。そうすることで、情報の2S(整理・整頓)を行います。トレーサビリティー、生産管理、予知保全の目的に必要な項目は同一項目の場合もあれば、別々になる場合もあります。目的を決めて項目を洗い出せば、使い道のない項目を何となく収集することを防ぎ、抜け漏れなく項目の洗い出しができます。

 最近よくお聞きするのは、ロボットによる自動化です。今まで人が設備を使って作業をしていたり、置き場から物を取り出し、設備に入れてから再度取り出したりしていた工程を最新工場ではロボットに替えています。

 この場合、ロボットが止まるとラインが止まってしまうので、ロボットから情報収集しておきたいという話になります。ロボットメーカーのシステムでは、ロボットの健康状態さながら細かい情報が取れます。例えば、関節の動きをするサーボモーターのトルク値や血液の流れのような電流の値などが事細かにみれます。それぞれの関節の動きや血液の流れを見て、そろそろ部品交換しようといった判断ができます。

 しかしながらロボットは、物を動かす目的で使用していますので、本当に重要なのは加工する際のいろいろな製造条件となります。品質を確保するために安定した生産を維持する上で、ロボットの稼働率を高くすることは大事ですが、収集したことに対する効果を見て、どこまで細かく情報収集するかの優先順位を設定すべきです。

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