安川電機が描くスマートファクトリーの3つの役割と現在地:スマート工場最前線(2/4 ページ)
IoTやAIなどを活用した革新的工場であるスマートファクトリーへの関心が高まっている。大手生産財メーカーである安川電機は、埼玉県入間市に同社のスマート工場の理想像を具現化する新工場「ソリューションファクトリー」を建設する。同社が「ソリューションファクトリー」で目指すものは何か。また具体的にどういう取り組みを進めているのだろうか。
「アイキューブメカトロニクス」のコンセプト
「ソリューションファクトリー」では工程同士を物理的につなぐことで自動化領域を広げるとともに、工程間情報も含めて連携を実現し、従来よりも一段高い「柔軟な自動化」を目指したものである。中心となるコンセプトが「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」である。
「アイキューブメカトロニクス」は、現場の自動化にデジタルデータマネジメントの考えを加えたスマート工場のコンセプトである。機械や設備を実際に稼働させた後のデータ活用により生産性の向上や品質の確保・維持、止まらない製造ラインの実現など、製造ノウハウを組み込んだソフトウェアの提供などで新たな価値を提供する。
「ソリューションファクトリー」ではこれらのコンセプトを具体化し、アイキューブメカトロニクスの下で、自動化と情報化を進めた工場の実現を目指している。
ソリューションファクトリーの中身を充実中
「ソリューションファクトリー」は現在建設中だが、その中で活用する生産ラインは、既に入間事業所内でさまざまな実証を進めている。特に「アイキューブメカトロニクス」のコンセプト導入を積極的に進めているのが、主力のサーボ製品である「Σ-7シリーズ」の生産ラインだ。
「Σ-7シリーズ」は2013年11月に販売開始したACサーボモーターの主力機種で、「装置性能、使いやすさ、環境性能、安心、サポート、ラインアップ、互換性」の7つを極めるというコンセプトで生まれた製品群である。「Σ-7シリーズ」の生産ラインにアイキューブメカトロニクスコンセプトを適用する理由として、熊谷氏は「入間事業所の生産は少量多品種のものが多いが、その中ではΣ-7シリーズは生産量が多い。より量の多いもので実績を作り、その効果を他の製品群に適用するという流れを考えている。その意味でまずはサンプル数が多く効果が見えやすく、さらに他にノウハウ転用が行いやすいという点でΣ-7シリーズのラインを選んだ」と述べている。
具体的に入間事業所内で行っているのは、工程間のつなぎ込みとデジタルデータ活用による「見える化」である。
安川電機は産業用ロボットの大手企業であるため、以前から入間事業所内の生産工程にも多くの自動化機器や産業用ロボットの導入を進めていた。一般的には自動化が難しいとされていた組み立て工程などでも自動化は進んでいた。白石氏は「既に組み立ての工程内作業だけでは90%は自動化できている。残りの10%が人の作業である」と現状について述べる。
しかし、工程間では人手の作業が数多く残されている。具体的には「搬送」や「外段取り」などは自動化できていない部分が多く残る。白石氏は「作業だけを見ると90%が自動化されているが、工場の生産工程全体で見ると現状の自動化率は60%程度である。これを早期に70%まで引き上げたい。ソリューションファクトリーでは将来的には90%まで引き上げることを目指す」と白石氏は述べている。
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