月60時間以上の残業――幸福度は上昇するものの、健康リスクが約2倍に:キャリアニュース
パーソル総合研究所が、日本企業の残業の実態や要因、対策について検証した「希望の残業学プロジェクト」の研究結果を発表。残業が月60時間を超えると幸福度が上昇するが、健康リスクも高まることが明らかになった。
パーソルグループの総合研究機関「パーソル総合研究所」は、2018年2月8日に「希望の残業学プロジェクト」の研究結果を発表した。
同プロジェクトは、東京大学の中原淳准教授との共同研究として実施したものだ。会社員6000人を対象とし、日本企業の残業の実態や要因、対策について検証した。
まず、管理職を除くメンバー層の残業時間について調査したところ、月に30時間以上残業している人の割合が最も多い業種は「運輸業、郵便業」(30時間以上の残業割合37.7%)だった。2位は「情報通信業」、3位が「電気・ガス・熱供給・水道業」(いずれも同32.1%)だった。
30時間以上の残業割合1位の「職種」は、46.8%の「配送・物流」だった。2位は「商品開発・研究」(同41.5%)、3位は「IT技術・クリエイティブ職」(同39.0%)となっている。
「(係長以上の)上司層」については、30時間以上残業している人の割合は「業種」では「建設業」が最も多かった(54.2%)。次が「製造業」(51.7%)、「運輸業、郵便業」(50.0%)の順となった。「職種」では「商品開発・研究」(65.2%)、「専門職種」(61.9%)、「生産・管理・製造」(56.1%)で多かった。また、この調査では、繁忙期に残業が平均50時間を超える業種が存在することも明らかになった。
残業発生のメカニズムは「集中」「感染」「まひ」「遺伝」
同プロジェクトでは、残業が発生する職場の特徴について分析し、残業が発生するメカニズムも検証。その結果、残業は「集中」して「感染」し、「まひ」させて「遺伝」することが判明した。
上司を対象にした調査では「優秀な部下に優先して仕事を割り振っている」人が60.4%を超えており、残業がスキルの高いメンバーに「集中」していることが分かった。また、残業削減に向けて取り組む企業で働く上司のうち30.4%が「部下に残業を頼みにくくなった」と回答。一方、残業対策を実施していない企業の上司で「部下に残業を頼みにくくなった」と回答した人は17.6%だった。
次に、残業が発生しやすい組織特性を調査したところ、残業への影響力が最も大きいのは「先に帰りにくい雰囲気」であることが判明した。組織内の同調圧力により、「帰りにくい雰囲気」がまん延(「感染」)して、残業が発生しているようだ。
残業と幸福度の関係では、「幸福度」は残業時間に応じて徐々に低下するが、残業時間が月60時間を超えると上昇することが分かった。しかし、残業時間が60時間以上の人のうち、強いストレスを感じている人の割合は残業しない人の1.6倍だった。重篤な疾患がある人は、残業しない人の1.9倍となっている。過度の長時間労働が健康被害の軽視(「まひ」)につながっていると思われる。
部下の残業時間に影響を与える、上司の行動についての調査では、若い頃に残業をたくさんしていた上司の部下は、残業時間が長くなる傾向があることが分かった。また、上司が新卒入社時に「残業が当たり前の雰囲気だった」「終電まで残ることが多かった」という経験をしていると、転職しても部下に残業をさせる「遺伝」の傾向があった。
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