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企業連携でアイデアを形に――GLIT(茨城県)地方発!次世代イノベーション×MONOist転職

「次世代の地域創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを紹介する連載の第2回。茨城県で若手経営者が連携し、革新的技術でモノづくりする「GLIT」を紹介する。

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イノベーションの概要

 「GLIT」は、部品・治工具から装置製作まで、ワンストップでアイデアを形にしてくれる、概念にとらわれない企業連携体。茨城県内企業を中心とした若手経営者育成グループ「ひたち立志塾」に所属していた9社が2012年に発足した「先端技術研究会」が前身だ。将来成長産業とされている「医療・介護」「航空・宇宙」「再生可能エネルギー」分野への新規参入を目指し、勉強会、研修会、展示会への共同出展などの活動を続け、共同受注体に進化すると同時に、名称をGLIT(Guild for Laeding Innovative Technology)と改めた。彼らがミッションに掲げるのは、連携で付加価値を高め、技術を向上させることによって、仕事を創出し雇用を生み出すこと。その結果として地域を活性化することだ。

 現在参加している企業は、10社。設計、各種材料の加工から自動化、検査に至るまで、装置製作に必要な、あるいは革新的な技術が集結しており、企業間連携のため余分な管理コストもかからない。持ち込まれる案件は、まず精査し、得意技術や関わる時間が最も多いと思われる企業が「取りまとめ企業」となって対応する。

 これまでの受託実績は、大学病院向けの放射線科用実験装置やトレーニングキットなど、また研究機関向けの研究開発用実験装置や高強度陽子加速器施設向け部品など多数。民間企業向けには、各種金型やシャフト、フランジ、ネジ、スプリング、鍛造等の各種加工から、新商品開発に関わる設計試作や省力化装置、介護器具や医療器具にいたるまで幅広い。実績を見るだけでも、GLITの技術力がうかがえる。

イノベーションの地域性〜茨城といえば……

 茨城県は、水産物のイメージが強いかもしれないが、実は農産物もとても豊富。たとえば、2015年の品目別産出額で全国第1位の農産物は、鶏卵、メロン、ピーマン、レンコン、みず菜、くり、セリ、チンゲンサイなど、第2〜3位にはレタス、梨、こまつな、落花生、白菜、マッシュルーム、パセリ、ネギ、かぼちゃ、ほうれん草など約20品目が名を連ねる。

 豊かな土地であると同時に、研究機関が集積しているのも茨城県の特徴だ。県南部の筑波研究学園都市には、29もの教育・研究機関がある。現在2万人を超える研究者が日々研究に励んでおり、ノーベル賞受賞者も生まれている。県中部の海に面した東海村には、日本原子力研究開発機構、ニュートリノや物質・生命科学の研究で世界をリードするJ-PARC(大強度陽子加速器施設)のほか、東京大学、茨城大学など、原子力研究機関が集積している。

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筑波研究学園都市には29もの教育・研究機関がある

 また、県最南端の鹿島には鉄鋼や石油化学産業等、素材産業が、北東部の日立には日立製作所の協力企業を中心に、約1200の電機・機械産業が集積しており、電気業を除く工場立地面積(2007年〜2016年の累積)は、1087haと全国第1位。茨城県には、革新的技術を生み出す土壌、研究や挑戦する風土が根付いているのかもしれない。

ここに注目!編集部の視点

 GLITの最大の強みは、1社でクローズするのではなく、それぞれ専門的な技術や知識を持ち、目の付け所や発想が異なる人たちが集まることで、ワンストップ体制を作っていることにある。

 アイデアは持っていても、どんな手段や技術を選ぶべきか迷っているような場合には、イメージだけで「丸投げ」することも可能。企画案に基づいて、それぞれの企業が知恵を出し合い、設計提案から試作・量産までスピーディーに対応してくれる。

 GLIT自体、いち早く多くの新しいアイデアと触れることも強み。技術力、発想力を高められる豊富な機会があることにも注目したい。

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