イノベーションを起こしたければ失敗コストの安いFPGAを使え――ザイリンクス:組み込み開発 インタビュー(1/2 ページ)
FPGA大手のザイリンクスは、車載向けと産業向けで好調を持続。特に日本では産業向けが好調だというが「開発サイクルの高速化にはFPGAが最適だ」(ザイリンクス日本法人社長 サム・ローガン氏)とし、さらなる成長に取り組む方針を示している。
FPGA(Field-Programmable Gate Array)大手のXILINX(ザイリンクス)は、車載向けや産業向けのFPGAが伸長し、好調を持続している。IoT(モノのインターネット)やコネクテッドカー、エッジコンピューティング、AI(人工知能)活用など、産業領域での先進IT技術の活用が進む中、同社では「開発サイクルの短期化が重要だ」と主張。それを支えるデバイス基盤としてFPGAの価値を訴求している。
FPGA(※1)は、製造後もプログラムによって機能が変更できる半導体(Programmable Logic Device)の一種で、論理や配線などをソフトウェアで設計できる自由度と柔軟性が特徴である。ザイリンクス日本法人の代表取締役社長であるサム・ローガン(Sam Rogan)氏に取り組みについて話を聞いた。
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日本市場は特に産業向けが伸長
MONOist 現状についてどう見ていますか。
ローガン氏 グローバルのXILINXでいえば、7四半期連続で売上高成長を見込んでおり、好調を持続している。その中で日本についていえば、直近の2年間はそれほどよくはなかった。要因になったのがワイヤレスネットワークに向けた投資である。グローバルではワイヤレスネットワークへの投資が非常に活発だったのに比べ、日本はLTE関連の整備は進んでいるものの、海外ほど大きな成長はなかった。
しかし、2017年に入ってからは日本は好調だ。日本市場では以前から車載向けと産業用向けの2領域を重点領域として位置付けて取り組んできたが、特に産業向けが好調である。ザイリンクスにとっての産業向けとは、工場の中で使うPLC(プログラマブルロジックコントローラー)やモーターコントローラー、マシンビジョンなどの他、監視カメラやATMなど幅広い領域を含む。これらの産業領域はグローバルでも伸びているが、日本の伸びはそれ以上となっている。
好調の要因の1つが、工場の製造装置やロボットなどの生産財である。中国の自動化ニーズが高まっていることもあり、日本国内の生産財メーカーは販売を伸ばしている。
MONOist なぜ、産業向けがここまで伸長していると考えますか。
ローガン氏 デバイスで考えた場合、産業向けではロジックがASIC(Application Specific Integrated Circuit)である場合が多かった。しかし、ASICでは主に2つの理由で産業向けの市場の動きに追随できなくなってきている。
1つはコストだ。産業向けの製品やそれに使うデバイスは、スマートフォンなどと大きく異なり、1モデルで大量の数が出るようなものではない。多品種少量で1モデルの数が少ない一方で顧客に応じたカスタマイズなどもあり、異なるデザインのデバイスを数多く開発しなければならなくなる。従来は複雑さがそれほどなく、ASICの開発費用もそれほどかからなかったので、それでも回収できた。しかし、複雑化が進みデバイス開発費用が億単位を超えるようになると、さまざまなパターンをASICでそれぞれ開発するというわけにはいかなくなってきた。そこでFPGAが採用されるケースが増えてきたという流れだ。
もう1つが製品化までに必要な時間(Time to Market)の問題だ。ASICではデバイスの開発期間に加え、システム設計までを考えると、市場投入に数年かかる場合が多い。これでは市場のニーズに柔軟に対応することが難しい。FPGAではもっと開発期間を短く市場投入が行えるために、ニーズの変化により敏感に対応することが可能となる。
特にこの開発サイクルについては、中国など海外企業がスピード感を重視している中で、日本企業にとっては競争で不利になりかねない状況となっている。産業向けの領域でも否応なく対抗していく必要が出てきている。産業向けは基本的には20年などの単位で使用される製品の市場である場合が多く、供給については長い期間で見る必要があるが、開発サイクルについてはもっと早めていくことが重要だ。
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