民間初の宇宙到達を目指すロケット「MOMO」、その挑戦の意義を探る:もうホリエモンロケットとは呼ばせない(4/4 ページ)
インターステラテクノロジズ(IST)は、観測ロケット「MOMO」の打ち上げを2017年7月29日に実施する。実業家の堀江貴文氏が創業に関わっているためホリエモンロケットと呼ばれることも多いISTのロケットだが、今回のMOMOの挑戦は、日本の宇宙開発にとって大きな一歩になるかもしれない。
世界には強力なライバルも
しかし超小型衛星はこれまで、ずっと大きな問題を抱えていた。それは打ち上げ手段だ。超小型衛星を安く打ち上げられる専用ロケットが無かったため、大型ロケットに“相乗り”するしかなかった。しかし相乗りの場合、現実的なコストにはなるものの、打ち上げ時期や投入軌道は主衛星に合わせるしかなく、自分では選べない。
もし小型で安価なロケットがあれば、相乗りではなく主衛星としての搭載が可能になる。時期も軌道も自由に選べるようになる。これは超小型衛星にとって、非常に魅力的な条件である。相乗りの場合、主衛星の都合で打ち上げが大幅に遅れることが良くあるのだが、これはビジネスとして考えれば、大きすぎるリスクといえる。
この拡大する市場を狙い、超小型衛星用のロケットを開発しているのはISTだけではない。世界で最先端を走っているとみられるのは、米国に拠点を置くRocket Labだ。
Rocket Labはニュージーランドに射場を構え、2017年5月、衛星の軌道投入に使える2段式ロケット「Electron」の試験打ち上げを実施した。何らかの問題が発生し、周回軌道には到達しなかったようだが、初打ち上げのロケットでかなり成功に近いところまで行けたのは、驚く他ない。
ちなみにRocket Labは、月面レース「Google Lunar XPRIZE」に参加しているMoon Expressチームと打ち上げ契約を締結しており、期限となる2017年末までにローバーを月に向けて打ち上げるとしている。さすがにそれはむちゃすぎるだろう……と思わなくもないが、そのくらい今のRocket Labにはイケイケドンドンな勢いがある。
ISTは超小型衛星用ロケットの開発に2016年より着手しており、2020年ころの初打ち上げを目指すという。だがRocket Labの実績が増えれば増えるほど、市場に食い込むのは厳しくなってくる。ISTとしては、今回の打ち上げを確実に成功させ、今後の開発に弾みをつけたいところだ。
将来、ISTが企業として成功するのかどうかは、正直筆者には分からない。世界的な衛星需要が予想通りに拡大しなければ、ビジネスが頓挫する可能性もあるだろう。しかし挑戦しなければ、少なくとも成功する可能性はゼロだ。これだけは断言できる。彼らは実際に挑戦を始めた。まずは、今回の打ち上げに注目してみよう。
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