3Dプリンティング技術を育てるために重要なこと: SAoE 2017レポート(2/3 ページ)
アメリカの航空宇宙・防衛企業のオービタルATKは、3Dプリンティング技術の健全な発展のためには、単に装置を購入するだけではなく、3Dプリンタメーカーとの共同開発や、教育・研究機関、ベンチャーの支援など積極的に周囲を巻き込んで行動することが重要だという。
ストラタシスと協力して宇宙利用可能な材料を開発
「3Dプリンティング技術の向上のためにはハードウェア、ソフトウェア、材料開発それぞれについて取り組む必要がある。そのためには3Dプリンタメーカーと産業界が協力することが何よりも重要になる」とフェルドミラー氏は語った。
製造企業は通常、3Dプリンタメーカーが公開する3Dプリンタの仕様を基に、作りたい部品を設計する。だがそうではなく、製造業が3Dプリンタ開発の上流から関与し、α版、β版などの開発を共に進めていくことができれば、双方にとってWin-Winの関係になるという。
オービタルATKの最近の成功例は、3Dプリンタメーカーのストラタシスと協力して開発したFDM向けプラスチック「Nylon 12CF」である。これは打ち上げおよび宇宙までの輸送に対応した高強度の炭素繊維入りプラスチックになる。「この材料の開発の際は、協業によって装置やソフトウェアに関するフィードバックが迅速に行えた。ストラタシスとパートナーになることは、互いにメリットが大きい。われわれの製品について正確に理解してもらうため、ストラタシスの複数のグループと緊密に連携した。多くの研究も行った」(フェルドミラー氏)。
「3Dプリンタメーカーと製造業は積極的に連携し、3Dプリンティングのロードマップを把握するとともに、1年、5年、あるいは10年先の目標を設定する。また目まぐるしく変化する3Dプリンティング技術の展望に応じて計画を随時更新することが望ましい」(フェルドミラー氏)。
オービタルATKはストラタシスの他にも金属3DプリンタメーカーのEOSなどと協力しており、ローエンド3Dプリンタも多く使用している。また州政府の技術評議会がスタートアップ企業への研究の助成を行っており、技術評議会のスポンサーになることで間接的にスタートアップへの支援も行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.