「NDロードスター」と「124スパイダー」から見えてきた、愛車になるための“余白”:クルマから見るデザインの真価(13)(1/6 ページ)
4代目となるマツダの「NDロードスター」。2012年発売の「CX-5」から展開されてきた新世代商品群の真打で、初代ロードスターのデビューから25年目での全面改良となった。兄弟車と比較することで、NDロードスターの個性と“余白”が見えてきた。
久々となるこの連載。今回のお題はマツダ「ロードスター」だ。
4代目のND型となったロードスターは、マツダブランド全体で見ると、魂動デザインでラインアップがそろう“仕上げ”という位置付けであったり、ロードスターとしては25年目という節目でのモデルチェンジであったり、Fiat Automobiles(フィアット)がロードスターから兄弟車を作ったりと、興味を引く話題も多いクルマだ。さらに、少し前にはハードトップの「ロードスター RF」も追加され、バリエーションも広がった。
ロードスターは、2016年4月22日に累計生産台数が100万台に達し、「2人乗り小型オープンスポーツカーとして生産累計台数が世界一」というギネス世界記録を更新し続けている。世界記録を更新し続けているスポーツカーを、ABARTH(アバルト)の「124スパイダー」も含めたファミリーとも比較しつつ眺め、その世界観を考えてみた。
ロードスターのカタチの進化・深化
2015年に登場した4代目ロードスター(NDロードスター)は、初代の「NA」から3代目の「NC」までのロードスターと比べるとマツダの中での立ち位置が少し異なり、3つの役割を求められて登場した様に思う。
まずはNAロードスターから25年という、ロードスターの歴史の積み重ねの中での節目を迎えるにあたっての意思表現。2つ目は、マツダのNo.1スポーツカーとしての役割。そして3つ目に、「SKYACTIV TECHNOLOGY」と「魂動デザイン」がセットでパッケージされた新世代商品群の第1幕の真打、ブランドのイメージリーダーとしての役割である。
初代であるNAロードスターが登場した頃のマツダには、「RX-7」というマツダ独自のロータリーエンジンによる、ハイパワー・ハイパフォーマンス志向のスポーツカーがあった。そのためロードスターは、RX-7とは異なるライトウェイトスポーツカーの世界観を提案する存在であればよかった。
その後、NAからNB、NCとモデルチェンジしていく中で、ロードスターのボディーもわずかながらも大きく重たくなり、気が付けばエンジンの排気量も2.0l(リットル)まで拡大していった。これ自体は、環境や安全に対する要求性能の高まりにより、モデルチェンジを重ねていく中でボディーサイズも拡大してきているという、多くのクルマで起きてきたことと同じ話である。
ただロードスターの場合、同じような時期にロータリーエンジンのスポーツカーがラインアップから消えたこともあり、“マツダのスポーツカー”をロードスターだけで背負うようになったのも無関係ではなかったのかも……と想像してしまう。
初代並みのライトウェイトスポーツカーを目指して
そうして登場したNDロードスターは「守るために変えていく」という理念を掲げ、現代に求められる安全性能や環境性能を満たしつつ、初代のNA並のライトウェイトスポーツカーを取り戻すことに挑戦してきた。
その結果、歴代ロードスターの中で一番短い全長と、最軽量グレードで1トンを切る990kgという車重を得た。全長はNAとの比較で40mm短く、NCとの比較では105mm短い。一方、全幅はこれまで一番大きかったNCの1720mmよりもさらにワイドな1735mmとなっている。もう1つ、全長に対してホイールベースの占める割合を見てみると、歴代モデルの中ではNDが一番大きな比率となっていて、ボディーの四隅にタイヤを配するレイアウトとなっている。
パッケージングという面では、人の乗せ方もNDロードスターでは異なっている。NCロードスターに対しAピラーの位置を57mm後退させ、リアデッキは29mm前方化させた結果、NCまでのロードスターより後方に、小さめのキャビンが位置するようになった。つまり、これまでよりもロングノーズ化されたプロポーションとなっている。
こういったパッケージを魂動デザインで包み込んだのがNDロードスターとなる。実車を眺めていると、NDロードスターは、短い前後のオーバーハングの角をさらに絞り込み、フェンダー上部のボリュームもそぎ落とされているので、ボディーの四隅でタイヤが踏ん張ったような印象を生み出している。
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