機械の稼働率より人の作業の効率化、優秀な人材は国外からもどんどん呼べ:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(13)(1/3 ページ)
東大阪市にある町工場で、ミャンマー、ベトナム、タイ、ネパールなど8カ国の外国人が働いている。1929年(昭和4年)に給湯器メーカーとして東大阪で創業した三共製作所だ。3代目社長の松本輝雅氏は、中量多品種の製造を効率よく行う独自の工夫と営業力で安定経営を続けている。今回は同社 松本社長の経営哲学を取材した。
現場の課題を分析し、最適な解決法で収益アップ
東大阪市にある三共製作所の工場内では、外国人労働者が複数の機械を担当しテキパキと作業を行っている。その働きぶりを見ながら「優秀ですよ」と3代目社長の松本輝雅氏はいう。「目がいい。手先が器用。感覚がいい。だからウチの製品は、品質が高いんです」。
彼らの視力は2.0が当たり前。検査表にないから計れないが「実際は3.0ある。われわれには見えない小さなクラックも見逃さずチェックしてくれる」そうだ。同社は、製造要員の7割を外国人が占める。国籍はミャンマー、ベトナム、タイ、ネパールと8ヵ国に及ぶ。
三共製作所は、1929年(昭和4年)に給湯器メーカーとして東大阪で創業した。松本氏が入社後、営業に力を入れて、自動車、航空機、燃料電池などさまざまな産業分野の金属部品製造へ事業を拡大してきた。
多業種と取引する同社は、中量多品種の要望に応じた生産体制を取っている。作業効率化のために松本氏が考案した工場内のマシン配置も独特だ。
ここには社長の経済哲学が込められている。
イスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱する「TOC(Theory of Constraints:制約理論)」をベースにしたという。TOCは、目的を継続的に最大化することを狙う管理哲学だ。「簡単な理屈で、しっかりと利益上がるシステム」と松本氏は語る。
製造業の場合、「いい機械を導入したら利益が上がる」とは限らない。機械の性能に任せてドンドンと量産をしたら、在庫が増えてマイナスになる場合もある。注目すべきは、ボトルネックだ。
モノづくりの現場では、それぞれの工程が連動して製品を仕上げていくが、そこにはボトルネックとなる箇所がある。相対的に制約を受けるところが存在するのであれば、それ以上の生産はできない。ボトルネックの解消、またはボトルネックを太くし、その能力に応じたモノづくりをすればいい。松本氏はそう考えた。
「製造業で、一番高いのは人件費です。機械は多少遊ばせても構わないから効率よく働けるように配置を工夫しています」
同社のように中量多品種を扱う場合、製造部品が変われば、機械を止めて刃物を変えたりセッティングの微調整が必要となる。その間、作業者が手持無沙汰になる時間が無駄だ。そう考えて機械の配置を工夫し、常時、作業者1人が3〜4台の機械を動かせるようにした。機械のセッティングが行われている間は、隣の作業者と調整し近くの機械も担当する。これにより、ライン全体で大幅な効率化が可能となった。
独自の機械配置を導入した結果、年間約2000万円のコストダウンとなったそうだ。
こうした工夫は、事務所内でも行っている。以前は、よくある事務所のように島を作るように机を並べていた。フロア内にギチギチのレイアウトだったそうだ。
今は、社長の机をフロアのほぼ中央に置き、社員は壁や窓に向かって座っている。打ち合わせの時には、椅子を持って移動する。仕事に集中しやすいだけではなく、中央に広いスペースができたため動線がよくなったという。
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