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IoTの活用が期待される自動車産業、新興国が再びけん引役にIHS Industrial IoT Insight(4)(2/4 ページ)

今後の製造業の発展に向けて必要不可欠とみられているIoT(モノのインターネット)。本連載では、IoTの現在地を確認するとともに、産業別のIoT活用の方向性を提示していく。第4回は、IoTの活用が期待されている自動車産業について、主要各国市場の動向について説明する。

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成長鈍化する米国市場、各社はプレミアム系車種で収益確保へ

 足元の世界全体の経済状況を見ると、ここ数年間で世界的な物価上昇は抑制されてきたが、主要国での価格への圧力が見え始めている。生産や新規機械受注、雇用、在庫、価格の拡大や上昇が加速感を増しており、2017年の世界経済成長が勢いづくことを示唆しているといえよう。ただし、世界的なリスクとしては、中国のハードランディング、世界各国の保護主義の台頭の可能性、また英国の欧州連合離脱(BREXIT)が挙げられる。

 自動車主要販売国での動向に着目すると、まず成熟市場の代表である米国市場は、雇用の底堅さや原油安による景気の好調さを背景に、2016年はリーマンショック金融危機前の水準を超え過去最高の販売台数を記録した。2017年以降、米国大統領のドナルド・トランプ氏による新政権となり、短期的には減税政策や、インフラ投資などの効果もあって、2018〜2019年は1750万台〜1760万台の販売台数規模を維持すると予測している。

 ただしその後は、建設需要の循環的側面や段階的な利上げの影響もあり、また、トランプ政権の貿易及び通商政策、また環境規制に関する政策が具体化し顕在化してくれば、不透明性が生じ、経済の先行きにも暗雲が立ちこめることで成長は鈍化すると見込まれる。特に、新政権のNAFTA再交渉の方針を受け、自動車メーカーのNAFTA投資戦略が揺らいでいるため、米国市場やその周辺市場の動向は今後の注視が必要だ。

 従来的な市場の見方とは別に重要になってくるのが、付加価値を高めた高級車などを中心としたプレミアム系車種への注力であろう(図3)。一般的に、充実した装備やIoTを活用したスマート社会に則した通信設備を搭載することで利便性や快適性を追求し、機能が消費者側にとっても有益と見なされれば、車両価格に転嫁しやすく価格吸収力も高いといえる。今後の台数の急激な伸びが期待しにくい環境において、収益性を求めてプレミアム路線でのプレゼンスを高めたい自動車メーカーも出現している。

図3
図3 米国におけるブランド系列別の高級車のシェア。赤色の折れ線グラフは米国市場全体に対する高級車比率の推移を示している(クリックで拡大)

西欧市場での不透明感が増す中で東欧市場に期待感

 欧州の自動車販売台数は、西欧と東欧で市場の様相が異なる。西欧市場における目下の懸念事項は、BREXIT、金融経済、そして主要国の選挙ということになろう。世界的な金融危機や欧州債務危機による政府の緊縮財政のため、経済成長は限定的であったが、主要国の景気回復や量的緩和による輸出増などで長い低迷期からの脱出がみられ、南欧での繰り越し需要の解放と、フリート系の法人需要を中心とした商用車やレンタカーが堅調で、買い替えの好循環を生み出していることから域内販売の成長が続いている。しかし、2017〜2018年にかけて不透明性が高まることから自動車市場への影響は拡大するであろう。また、車両に対する規制の強化や厳格化も成長にとっては足かせとなろう。

 対してロシアを中心とする東欧市場は、短期的には経済制裁や原油価格の低水準、通貨安やウクライナ情勢のマイナス影響で経済は低迷する。ただし、ようやく商品市況や原油価格が持ち直す傾向にあることで、国家収入増によりインフラプロジェクトの増加や、景気回復による購買力の高まりが今後緩やかな市場の回復、成長につながると見込む。同時に強力な政権による経済活性化への抜本的なテコ入れ策も期待できると言えよう。

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